毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。

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第87話(idea 2026年6月号掲載)

今月のテーマ

 

地域運営の落とし穴 (71)

デマンド型タクシーの 考え方

便利な生活の代償 ~誰かにとっての「不便」は、誰かにとっては「ありがたい」もの~

 

 「高齢者等の移動手段」という課題は、多くの地域で‘課題の優先順位の高ランク’に位置づけられています。この話題は、たびたび本コラムでも取り上げているのですが、この課題に真剣に向き合う地域も出始めたため、改めて考えてみます。

 

 現在、一関市内では、鉄道(JR 東北新幹線、JR 東北本線、JR 大船渡線)、民間路線バス(岩手県交通)、各種タクシー事業者のほか、民間の路線バスが入っていない地域を中心に、市営バス、廃止路線代替バス(東磐交通株式会社)が走っていますが、利用者は少ない状況です。市営バスの利用者が少ない場合には「デマンド型タクシー()」が導入されているのですが、「デマンド型タクシーは使いにくい」という意見もたびたび聞かれます。果たして、「デマンド型タクシーの使いにくさ」は「課題」なのでしょうか?

事前予約を受けて特定のエリアまたは路線を運行する乗合のタクシー

 

 『一関市地域公共交通計画(令和6年3月策定)』の「4,公共交通に関するニーズ調査」によると、外出時の主な交通手段は、すべての地域で「自動車・バイク(自分で運転)」の割合が最も高くなっています。自動車以外では、一関地域では「徒歩・自転車」、室根地域や川崎地域では「JR」の割合が他地域と比較して高くなっています。また、「家族・知人等に送迎を頼む」も全地域で一定数の割合があります。

 

 令和7年度に「モリウシ希望ネット花泉(花泉市民センターエリアの地域協働体)」が実施した「花泉地区高齢者の移動ニーズに関する意向調査」を見ていくと、回答者(65歳以上の比較的自立した生活を送る高齢者本人及びその家族)の70%以上の人が「自動車の免許を保有し、自分で移動できているため、今現在は特に困っていない」という実情のようです(複数の設問とその回答より分析)。

 

 つまり、自分で移動できる人が多い、もしくは家族送迎等でなんとかなっている、という現実です。(実際には、困っている人もいるのでしょうが、アンケートからは危機感が見えてこない……)

 

 ただ、この調査では「‘将来への不安’が課題」とする意見が多くみられるので「今は困っていないものの、免許返納後の不安感から、デマンド型タクシーの利便性の向上を望む声が多い」のではないかと推測します。

 

 デマンド型タクシーをはじめとする公共交通は、5年先には、利用する人は増えるだろうと考えます。そこで注意してもらいたいのが、「使い方」です。特にデマンド型タクシーは、「タクシー」なので、「呼んだ場所から目的地まで移動できる」と思っている人が多いようですが、導入の目的は、「市営バス(民間バス路線の廃止に伴う導入)の利用者が少ない場合の代替手段」です。タクシーと名はついていますが、「タクシー会社が運営する市営バス」のようなもの。なので、決められた運行日時に、自宅の玄関前ではなく「自宅付近の公道上」などの指定された乗降所から乗り、目的地近くの乗降所で降りる。要は、バスと同じです。各地域で聞こえてくる「使いにくい」という声を分析していくと、求めているサービスが「必要な時間に玄関前まで来てくれて、要求する先に安価で行ってくれること」を意味している部分が強いのですが、根本的な考え方が違うのです。

 

 デマンド型タクシーの乗降方法は、車の免許を持たずにバス等を利用してきた人にとっては特に違和感はないそうです。なぜなら、バス時間を中心に生活時間の設計をしていたから。しかし、これまで自家用車などで移動をしてきた人は、自分の都合の良いときに、自由に移動できたこと’が体に馴染んでいるので、バス時間を中心とした生活に適応するのが難しいのだと思います。

 

 自動車が「一人一台」の時代の前は、バス利用をしていた市民も多く、その時代に戻るような感じでしょう。電車を乗り継ぎ、バスを使い、目的地まで移動するなんて、自動車を持たない都会的な生活です。「介護が必要な人には無理でしょ」と言われそうな気もしますが、介護が必要な人には、「介護タクシー(介護保険タクシー)」など、介護保険が適用されるタクシー等があります。つまり、デマンド型タクシーの利用者は、介護状態ではない人と考えて良いのです。

 

 ただただ「不便」と言う前に、今あるサービスと、その背景にあるものも見ながら、状況に応じて、いかに使うか=適応していくか」を考えることも大事なのではないでしょうか。

 

 

 

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