(idea 2016年2月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

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一関市の防災活動と地域づくり

一関市消防本部 消防長(消防正監) 高橋邦彦さん

  • 対談者 一関市消防本部 消防長(消防正監) 高橋邦彦さん
  • 聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹

1本部4消防署5分署1分(ぶん)遺所(けんしょ)での消防防災体制

【小野寺】消防署の仕事はおおよそ見当がつくのですが、消防本部の体制や業務などの細かい部分をお聞かせください。

一関市消防本部 消防長 高橋邦彦さん
一関市消防本部 消防長 高橋邦彦さん

【高橋】一関市消防本部の組織は、平成18年4月から効率的な消防防災体制を拡充するため、1本部(総務、予防、消防、防災課)、4消防署5分署1分遺所(西、南、東、北消防署。平泉、藤沢、室根、川崎、東山分署。田村町分遺所)の体制で業務を行っています。管轄は一関市全域になりますが、平泉町も消防に関する事務を一関市が受託していて業務を行っています。住民の方には、消防署は火災、救急、救助などの各種災害の対応と思われがちですが、それ以外にも119番をかけると応答して車両出動する通信指令業務、火災予防のために建築物の安全確保や消防設備の検査やガソリンスタンドなどの危険物施設の許認可事務もあります。職員は、普段の勤務中にどんな災害にも対応できるような形で訓練を実施しています。さらに、防災に関する事務もあります。例えば、地震、水害など大規模な災害の対策、危機管理、また、自主防災組織の育成や消防団に関する事務も行っており、消防から防災へと幅広く事務を行っています。

 

【小野寺】まさに幅広い業務内容ですね。一関市の災害発生の傾向はどのようになっていますか。

 

【高橋】一関市の災害状況ですが、火災については、件数はここ10年間を見ると少ない年で50件、多い年で70件くらいです。統計が記録された昭和48年から見ると、全体的な傾向として件数は減少傾向です。ただし、住宅火災での死者数は、最近10年間の累計は24人で、うち高齢者が16人と全体の67%を占めています。全国統計(平成26年)でも68.4%ですから同じくらいの割合です。今後高齢化がさらに進むとその対策も重要と考え、今年から高齢者を対象にした防火指導に特に力を入れています。老人クラブの諸行事や介護予防教室、デイサービスなどに職員が出向いて、火の取り扱い、住宅用火災警報機の設置促進、就寝場所をできるだけ避難しやすい1階に移すなどの話をしています。もう一つは、民生委員さん方の協力を得て、自宅を訪問しての防火指導も行っています。

 

【小野寺】高齢者を対象にした防火指導などはますます必要になりますね。自然災害については、どのような対策が行われていますか。

 

【高橋】地震について、一関市は平成20年の岩手・宮城内陸地震、平成23年の東日本大震災と2度の大地震を経験しました。その教訓を踏まえて、新たな時代に即した消防防災対策の構築に取り組み、住民が安心安全に暮らせるまちづくりに取り組んでいきたいと考えています。台風や洪水では、過去には大きな被害があった所ですし、その後においてもたびたび水害に見舞われています。昨年、洪水危険河川の監視計画を作りました。内容は集中豪雨に対応するため、雨量(1時間30ミリ、3時間70ミリ)に応じた対策を定めています。また、洪水の危険性がある15の河川について、河川水位に基づいた市職員の行動、連絡体制、市民の行動などを定め、積極的に情報提供を行いながら被害発生の恐れのある地区の住民に避難を促すようにしています。

岩手県一の消防団員数で当たる防災対応

【小野寺】市内には自主防災組織(以下「自主防」)や消防団が各地域にありますが、現状はどうでしょうか。

 

【高橋】市内の自主防の結成率は、今年4月1日現在で90.9%(行政区単位)になっています。こちらでは、自主防の方を対象に災害対応力の向上を目的とした消防防災セミナーを実施しています。これは、自主防の方にテーマを考えていただきそれに合わせて職員が出向いて出前講座を行う形です。また、セミナーの指導員を育成することも必要と考え、自主防、婦人消防協力隊、消防団などの方も一緒に行ってきています。それによって地域のリーダーとして広く活動してもらいたいと考えています。消防防災セミナーは平成25年度の186件8045人をピークに少しずつ減少しています。今年度は指導員のさらに上の上級指導員を育成することを目的に、一関防災指導員講習会を実施しています。その方々に育成強化の一翼を担っていただきたいと、月1回3時間で6カ月のカリキュラムの中で実施しています。

【小野寺】消防団の現状はどのようになっていますか。

 

【高橋】一関市消防団は8地域28分団140部で組織されており、団員数は4月1日現在2764人となっています。一関市の条例定数は2900人で充足率は95.3%と、団員数と充足率は岩手県で一番です。盛岡市は30万都市ですが、団員数は一関市の方が多くなっています。

 

【小野寺】団員数や充足率が岩手県でトップであることは初めて知りました。ところで、課題としてはどんなことがありますか。

 

【高橋】消防団の課題は団員確保だけでなくサラリーマン化が進んでいることです。かつて団員は自営業が多く、サイレンが鳴ればすぐに駆けつけられたのですが、最近の統計では被雇用者(自営でない団員)は70%くらいです。このことから、災害発生時に出動するには消防団員が勤めている事業主さんの理解が必要になります。例えば、夜に地元の消火活動に従事し、朝自宅に帰って来て出勤することになります。そのため、平成22年から消防団協力事業証表示制度を設けています。ある一定の基準で消防活動に従事し協力していただいている事業所に協力証を交付しており、玄関などに掲示したり、会社のパンフレットにも記載したりしています。平成27年4月現在で38の事業所に交付しています。

防災をキーワードとした地域づくり

【小野寺】自主防や消防団について今後への希望などをお聞かせください。

 

【高橋】防災に関して地域の役割を考えた時、災害の時我が身を守る術を構ずる、自分の身を守れば隣近所がどうかという地域の連携、安全な場所への移動が重要だと思います。地域の防災力は、自助・共助・公助それぞれの3つが連携し合いながら行うことが大切ですし、行政の活動が基本で自主防がどう活動していくかが重要だと考えています。

 

【小野寺】地域では、防災マップ、ハザードマップを作っていますが、市で作成した防災マップとずれがあるとの声も聞かれます。

 

【高橋】消防署では住民の方々に住んでいる所がどんな所か知ってもらうために地図を作る活動をしています。地震で倒壊する恐れがある古い建物、避難の支援を必要とする人など、皆で考えて地図を作ることが大切です。市指定の避難所には最終的に避難してもらいますが、その前に安否確認し近くに避難する。被害状況から踏まえて避難所に向かうか、ここに留まるか、集まった人たちで考える。避難所に入ったら運営管理をどうするか。皆さんで協議しながらルールをつくることが大切です。

 

【小野寺】消防署自体が身近な存在ということでは屯所のシャッターアートが面白いと思います。

 

【高橋】この事業は、ただ単に消防団だけではなく地域の人達を巻き込み、子供から大人まで集まって同じことをすることで地域のつながりが強くなるのかと思います。原画は一関地域の小学生から、ペイントを希望する分団も同時に募集します。選ばれた原画を基に地域の方々でペイントしますが、原画が選ばれた子供とその家族も集まります。一つのことに対して地域の多くの方々が関わり、地域の触れ合いやつながりが広がります。

 

【小野寺】小さい時から消防に関しての意識を持てることは良いことですね。

 

【高橋】顔が見える関係になると、災害時に隣近所に一言声をかけやすくなると思います。

 

【小野寺】地域づくりには少子化や高齢化の課題はありますが、生活しやすい地域をつくることが大前提です。それには隣近所の見守りや助け合いも含めて、災害時に地域全体で対応できるつながりを作っていくことが大切だと思います。

 

【高橋】防災をキーワードとして地域づくりに結びつけてもいいのかと思います。地域で行う災害訓練に参加することにより地域内の様子が分かり、それがベースとなりそのつながりで地域の防災力の向上が図られることになります。

 

【小野寺】消防署は特別な存在でなく、話題提供していただく身近な場所と考えればいいのかと思いました。防災は日常生活の中での大事なキーワードですね。現在市が進めている地域協働の中の防災、安全安心分野では切っても切れない部分だと思います。情報提供や講座等に我々も関われるとうれしいと思いました。

※ここに掲載できなかった内容は、「こぼれ話」として当センターHPに掲載しています。併せてご覧ください。

屯所のシャッターアート
屯所のシャッターアート

基本情報

【一関市消防本部】

消防長(消防正監) 高橋邦彦さん

〒021-0053  一関市山目字中野140番地3

電話 0191-25-0119(代) FAX 0191-25-5119

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