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(idea2025年11月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
縄文時代などに人間が「住居」などに利用していた痕跡(≒埋蔵文化財)が見つかった洞窟は「洞窟(洞穴)遺跡」と呼ばれ、当市内には少なくとも19か所が存在します(前号ではその一部をご紹介)。そうした洞窟は、山中や川底などに存在することも多いのですが、いったいどのように周知の洞窟になっていくのでしょうか?洞窟の種類とともに、その調査方法についても着目し、洞窟遺跡のロマンを感じてみました。
※記載内容はあくまでもセンター独自調査の結果です。
前号にて、市内の「洞窟遺跡(=洞穴遺跡)」をご紹介しましたが、旧石器時代や縄文時代に住居として利用されていた洞窟は、人工的に岩石を掘り進めた人工洞窟ではなく、自然の作用によって形成された自然洞窟であったと考えられます。
自然洞窟は、空間が形成される仕組みによって種類が分かれ、代表的な種類は「溶食洞窟」「浸食洞窟」「火山洞窟」「構造洞窟」です(下表参照)。県内では、「龍泉洞(岩泉町)」「幽玄洞(一関市)」が溶食洞窟、「青の洞窟(宮古市)」「鬼ヶ瀬山北第1洞穴(盛岡市)」が浸食洞窟にあたります。
洞窟には、コウモリのように洞窟を出入りする生物のほか、洞窟外では生活できない「真洞窟性生物(気温・湿度が一定な洞内環境に適応した生物)」という種類もいます。また、「細菌類(バクテリア)」「菌類(カビやキノコの仲間)」などの微生物も生息しています。
洞窟は、地質学や生物学など様々な観点から貴重な研究対象として扱われており、研究目的も含めた「洞窟探検」そのものを指す「ケイビング」という分野は世界的に親しまれています。国内でも「ケイビングクラブ」や「大学の探検部」など、ケイビングを専門とする人々が活動しており、当市にも存在しています。
洞窟探検の専門家は、洞窟の形態を「地図」として記録するための「測量」を行います。私たちが普段目にする地表の地図では等高線によって高低を確認することができますが、洞窟内の空間は、奥行き・幅・高さがあり、壁も平坦ではなく複雑に入り組んだ形状のため、地表と同じやり方で全体像を表現することができません。そのため、洞窟は「平面図」「断面図」「立体図」に落とし込み、記号や数字、文章で補足することで全体を把握することができるように記録しています。測量では、ポケットコンパスやクリノメーター、レベル(またはハンドレベル)など、それぞれの洞窟の広さに合わせた器具を使用します。この地図は、各専門分野の研究者にとって欠かせないものとなります。
代表的な洞窟の種類
| 溶食洞窟 | 侵食洞窟 | 火山洞窟 | 構造洞窟 |
| 石灰洞、鍾乳洞、氷河洞など | 海食洞、河食洞、風食洞など | 溶岩洞、火口など | 割れ目洞、断層洞、節理洞、地震動 |
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雨水や地下水によって岩石が少しずつ解かされて(溶食作用)形成される洞窟。 天井や壁から染み出した石灰分を含む地下水から二酸化炭素が抜け、石灰分が晶出することでできるのが鍾乳石。 |
雨水や地下水、皮の流れなどによって岩石が削られて(侵食作用)形成される洞窟。 水で解けない岩石や鉱石の地層にできることが多い。 |
火山の噴火により流出した溶岩の中に形成される洞窟。 溶岩内に巻き込まれた大木などが燃えて空間ができたり、表面のみ固まって内部の溶岩が流れ出したりして形成される。 |
地すべりや断層、しゅう曲など地殻変動によってできる割れ目や断層の崩落、剥離によって形成される洞窟。 崩落の可能性が高く、内部の調査には危険が伴う。 |
それでは実際、洞窟の調査はどのように行われているのでしょうか?当市で活躍する洞窟探検の専門家から詳しく伺うことができましたので、ご紹介します!
上記で洞窟の調査について触れましたが、当市内にも洞窟探検を専門とする「東山ケイビングクラブ」という団体があります。同クラブは1984年9月に発足し、岩手県内外の様々な洞窟調査に携わり、各専門分野の研究者が洞窟を調査する際のサポートなども行っています。今回は、代表の菊地敏雄さんに、調査の流れや実際にあったエピソードについて詳しく聞いてみました!
菊地敏雄氏
(東山ケイビングクラブ代表)
ケイビング歴50年。「幽玄洞(一関市東山町)」の観光開発当初から携わり、往復だった通路を一方通行にする開発調査に携わった。
Q 「布佐洞窟遺跡」 (前号にて紹介) の案内看板を作図したのはいつ頃ですか?
布佐洞窟の中を測量したのは、1988年5月~6月(合同調査。主催は東山ケイビングクラブ)になります。1997年3月に、布佐洞窟内外の環境整備を行なっている布佐自治会から依頼を受け、図面を作成しました(同自治会が案内看板を設置)。
Q 調査対象となる洞窟は、どのようにして見つけるのでしょうか?
私たち「東山ケイビングクラブ」は、石灰岩の洞窟を調査対象としています。
誰も入ったことがない洞窟を見つけるには、初めに、その地域に住む人に、洞窟の有無をヒアリング調査します。地元の人が知らない洞窟もあるので、地表に「水が湧き出ている場所」「大雨が降った時だけ水が出る場所」なども聞いて、穴を探すヒントにします。ヒアリング調査だけでなく、現地を歩いて探すこともあります。
現地を歩いて探すとは!?
✓地形を見て凹んでいる部分を探す。
✓冬場であれば、地下に穴がある部分だけ雪が無いことがある(洞窟内の気流は、夏と冬では逆になるため)。
夏は、洞窟の上の隙間からあたたかい外気が入りこみ、内部で冷やされ、下側にある穴へ空気が流れていく。
冬は、下側にある穴から冷たい外気が入り、内部であたたまって上の隙間へ流れていく。
※春と秋は、夏と冬の気流の流れが日中と夜に交互に起きている。
一関市の場合、地下水付近では12度〜13度。地下水がない所では14度〜15度に保たれている。
Q 「水が湧き出る場所」を聞くのは何故ですか?
石灰岩の洞窟は、地殻変動によってできた割れ目に沿って弱酸性の雨水が流れて石灰岩を溶かして洞窟をつくります。流れ込んだ雨水は外に出ますが、排水量を越える雨水が入った時は通常使われていない排水口から流れ出すので、「水が湧き出る場所」を聞けば、洞窟を見つけられることがあります。
Q 洞窟の調査はどのようなことが行われるのでしょうか?
洞窟の形は様々あり、主に縦穴の場合、下降にロープを使用します。地底湖がある時はケイブダイバーに地底湖にある水中通路を調査してもらいます。探検、測量、生物調査、写真撮影などの班に分けて調査します。
洞窟は人が通れる空間もあれば、狭くて通れない空間もあります。洞窟内には気流が流れていて気流を確認するためにわざとタバコを吸ったり、線香の煙で確認するんです。風を肌で感じることもありますが、それほど速い流れでないことが多いので煙で確認します。その気流を見て、現在の通路とは別の通路に繋がっている場所を探すことができ、洞窟の全体を把握していきます。
Q 洞窟の調査は1日で終わりますか?
長い洞窟を調査する場合、洞窟がある場所や調査できる日数・回数にもよりますが、時には十分な装備を持ち込んで泊まりがけで調査することもあります。私は最長で5泊6日ですね。洞窟調査で泊まることは稀です。
「洞窟に泊まる」とは!?
洞窟内では寝袋に入って寝るのですが、なるべく雫が垂れてこない、乾燥している場所を探して寝床とします。
食事を作る時の水は、洞窟の上流に民家や放牧場等が無いことを条件に、洞窟内の地下水を使います。洞内泊する時の水は貴重なので無駄の無い使い方をしなければなりません(菊地さん談)。
水が流れている洞窟に関しては、入っている間に雨が降ってきて水位が上がり中に閉じ込められることがあり、それは避けたいので、調査日前の1週間の降雨状況や調査期間の天気予報を調べます。洞窟内でどのくらい水位が上昇するかは、「増水で流れ込んだ木の葉が付いている高さ」や「壁面に付いている泥の高さ」から確認できます。
Q 洞窟の調査はどの時点で完了するのでしょうか?
洞窟調査に終点はないです。さんざん探検して測量して、ひとまずの区切りは付けるんですが、後から同じ洞窟に入った人が、私たちが見逃した穴を発見し、別の通路を見つけることがあります。洞窟調査は始まることがあっても、終わることはないですね。
洞窟調査で熊に遭遇!?
Q.調査で山奥を訪れた際、熊に遭遇することはありませんか?
A.ありますね。普段は、熊が冬眠する前に調査するのですが、時期を間違ってしまい、親子の熊に出会ってしまったことがあります。私たちの存在を見つけた熊は、さっさと先に穴に入ってしまって……。1時間くらい穴と睨めっこしたのですが、熊は出てこなかったので、調査を諦めたことがあります。
洞窟は崩れるのか……!?
Q.「洞窟は崩れる」というイメージがあるのですが、洞窟が地下にあるとき、地面が崩れたりしないのでしょうか?
A.洞窟の天井部分が崩れて地表に凹地ができることあります。ドリーネと呼ばれる石灰岩地帯の独特地形の1つです。地震が起こった際に洞窟内にいたことがありますが、音が通り過ぎるだけでした。地震で揺れるのは地表だけです。石灰岩洞窟は、1年や2年でできるものではなく、何千年、何万年以上かけてできている穴です。その間いくつも大きな地震があったはずなのに、残っている空間です。洞窟がある石灰岩帯の中に「破砕帯」があれば、もちろん崩れますが、地殻変動でつくられた割れ目に沿ってできた洞窟は、坑道とは違って崩れることはほぼありません。人間が掘った坑道の場合、「地質構造に逆らって掘った時」には、落盤などが起きます。 洞窟の入口が、雨水が運んだ土砂や山の斜面からの落石によって埋まることがあります。
<取材協力>東山ケイビングクラブ 菊地敏雄さん
<参考文献>編者・洞窟サイエンス編集員会(2009)『洞窟の不思議とそこに生息する生き物たち』/発行人・塩谷茂代 、編集人・尾崎清子 、発行所・イカロス出版株式会社(2012)『暗闇に息づく神秘を訪ねてーニッポンの洞窟』/上野俊一、加島愛彦(1978)『洞窟学入門 暗黒の地下世界をさぐる』/東山町史編纂委員会(1978)『東山町史』/岩手県教育委員会(2000)『岩手の洞穴遺跡』
※現地調査等にご協力いただいたみなさま、ありがとうございました!
↓実際の誌面ではこのように掲載されております。
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(12月28日から翌年1月4日まで)
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