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私たちは「健康づくりサポーター」~‘組織的な草の根活動’で保健推進【前編】~

一関市保健推進委員協議会副会長 浦野清子さんの画像

一関市保健推進委員協議会副会長 浦野清子さん

一関市保健推進委員協議会

 

 一関市保健推進委員協議会(令和7年発足※1)副会長。平成19年より摺沢・旭町区の保健推進委員となり、令和3年から大東地域保健推進委員協議会の会長(現支部長)へ。介護士として勤務する傍ら、地元での保健推進員活動と、役員としての活動を両立させている。

 ※1 一関市の合併後、保健推進委員の活動は統一されたものの、保健推進委員協議会は8地域ごとに設けられたまま活動していた。令和7年に組織を一本化した。

 


 

 

対談者 一関市保健推進委員協議会 浦野清子

 

聞き手 いちのせき市民活動センター  センター長 小野寺浩樹

 

 


 

 令和8年6月現在、一関市内では602人が委嘱されている「保健推進委員」。その歴史は昭和32年に岩手県の国保連が推進した「乳児死亡率半減運動」に遡り、昭和60年には県内に5千人以上の推進員(市町村によって名称は様々)が委嘱されていました。時代によって主要課題は変化しますが、求められた役割は市民の健康を守り育てる「組織的な草の根活動の展開」でした。(2回シリーズの前編)

 


 

小野寺 集落の総会などの場で、選出されることも多い保健推進委員ですが、どんな役割なのか、分かるようで分からないというのが正直なところです。浦野さんは10年以上の経験があるということですが、ご自身の役をどのように捉えていますか?

 

浦野 私は、保健推進委員を「市と地域住民をつなぐ橋渡し役」だと思っています。保健推進に関する市の情報を、地域住民に提供する役割です。

 

小野寺 情報の橋渡しと言うと、確かに以前は成人検診の調査票(申込書)を保健推進委員さんが個別に配布していましたよね。

 

浦野 はい。戸別訪問による調査票の手渡しは、受診率向上のための活動の一環でした。一軒一軒の訪問は大変でしたが、私はその活動がきっかけで長くこの役を続けています。

 

小野寺 戸別訪問に魅力を感じていたんですか?

 

浦野 一軒一軒回ることで、同じ自治会に住んでいても面識がなかった方のことを知ることができ、それが私にとってはすごく大切なことだなと思えたんです。調査票の配布は冬ですし、回収も保健推進委員が行う時代もあったので、大変な経験をされた委員さんも多いとは思いますが……。

 

事務局※2 平成19年から回収は郵送化になり、令和元年からは配布も郵送になりました。さらに今年度からは調査票が廃止になり、対象者※3には受診票が直接届くようになりました。

2 同協議会の事務局は「一関市健康こども部健康づくり課」にあり、事務局員は保健師が担い、保健師との連携関係が構築されている。

3 過去3年間の受診歴や年齢、性別、加入する健康保険の種類などを基にしたもの。

 

小野寺 郵送化の背景は保健推進委員さんの負担軽減ですか?

 

事務局 それもありますが、配布中の事故や、個人情報漏洩に関する懸念もありました。表札がない家も増える中で、日中の不在も多く、誤配布もあったようです。その他、様々な社会変化の影響で、戸別訪問での配布が限界を迎えたという流れです。

 

小野寺 確かに今の時代を考えれば納得できます。でも戸別配布が無くなったことで、「保健推進委員の仕事ってもうなくなったんじゃない?」という声が出てきた気がします。

 

浦野 はい……。でもそれは誤解なんです。私たちの役割は受診率向上の取組だけでなく、地区健康教室のお世話役や地域で受けた相談のつなぎ役など、健康の保持増進に関する活動をすることです。そのため、保健推進委員になると、会議や研修など、学びの機会がたくさんあります。私自身、一個人としては健康に関する講座などにあまり参加しなかったと思いますが、委員になったことで、自ずと導かれて、様々な学びを得ています。その学びを地域の人たちと共有することが大きな役割なんです。

 

事務局 テレビやインターネットなどでも健康情報が溢れている時代ですが、案外それを見て実践する人は少ないように思います。でも、同じような「〇〇予防には〇〇をした方が良い」という情報でも、同じ地域の人など、顔見知りの人からの口伝えで言われると、やってみようかなと思ったり、行動を変えるのではないでしょうか。保健推進委員の方々はまさにそうした「健康づくりサポーター」としての役割を担っています。

 

小野寺 まずは保健推進委員たちが学んで、その学びを地域の人たちに伝えていく役割、と。

 

浦野 私たちは市の保健師や栄養士の方々と一緒に活動することも多いので、学ぶ場がたくさんあって、かつ、保健推進委員協議会があることで、横のつながりがたくさんできるんです。さらに役員になると、この役をしなければ多分出会わなかったであろう方たちとのつながりができて、自分の世界が広がり、すごく楽しいですよ。

 

事務局 実は保健推進委員の方々は心身ともに元気になるという報告※4もあって、それは研修で様々な学びを得ていることはもちろんですが、つながりも関係していると思うんです。委員同士の活動交流会などもあり、ネットワークは広がっているようです。

4 長野県須坂市HP内掲載資料「保健補導員会の活動」より https://www.city.suzaka.nagano.jp/material/files/group/6/otassha.pdf

 

小野寺 行政から降りて来る役に対しては、ネガティブなイメージがつきがちですが、それは「何をする役割」という説明がきちんとなされずに、「誰にしますか」という話にしかなっていないからなんですよね。現役の担当者がそうやって「楽しい」と感じていることを、きちんと共有する場があれば、後任者も見つけやすくなるんじゃないでしょうか。

 

浦野 私も長くこの役をやっているので、他の方にバトンタッチしたいと思う反面、実はここだけの話、「役を渡すのがもったいないな」と思う気持ちもあるというのが本音です(笑)

 

小野寺 それだけ魅力的な役なんですね(笑)ちなみに、保健推進委員という役割は合併前から旧市町村それぞれにあった※5ようですが、地域による違いなどはありますか?

 名称や設置時期は旧市町村により異なる。昭和61年時点での名称と設置状況は上記図参照。

 

事務局 各市町村によって名称や健康づくりに関する事業は異なっていましたが、方針や役割は同じです。ただ、委嘱している人数が地域によって異なっていました。合併後も、概ね旧市町村時代の人数と同数で委嘱していますが、なり手不足で委員の委嘱が難しくなってきているという実情もあるなど、保健推進委員の確保が課題になっています。

 

 

二言三言 保険推進委員の委嘱状況の画像

6 昭和61年の定数及び名称は岩手県民国民健康保険団体連合会発行の岩手の国保50年史(1988)』より抜粋。 

 

【後編につづく】