(idea 2022年3月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

二言三言 143/115129

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「先祖が遺した物」を正しく「処分」する

~骨董屋は‘物’をつなぐ‘仲人’【前編】~

「好観堂骨董店」の店内の様子

店内の様子

木村 正明さん

 一関市山目字十二神に店舗を構える「好観堂骨董店」店主。昭和59年から毎月第4日曜日に仙台市青葉区の東照宮境内で「仙台古民具骨董青空市」を主催するほか、毎月17日は「業界専用骨董オークション交換会」として古物商許可を持っている人向けの市場を主催。趣味はスノーボード、テニス、空手など体を動かすこと。昭和28年、気仙沼市生まれ。

対談者 (有)好観堂骨董店 店主 木村正明さん   

   

聞き手 いちのせき市民活動センター  センター長 小野寺浩樹 

 「終活」という言葉・考え方が普及した昨今。介護や葬儀、相続等に関しての意思を書き記す作業より先に、まずは「生前整理(≒断捨離)」に取り組むという人も多く、団塊の世代が75歳前後に差し掛かる今、「生前整理」を始める人はさらに増加することが予想されます。はたして両親や祖父母など、先祖から引き継いだ物品は、どのように取り扱うことが適当なのでしょうか(2回シリーズの前編)。

 小野寺 「終活」ブームや、家の建て替えなどで、価値ある古い物が捨てられてしまうことが増えているのではないかと危惧しています。

 

木村 今の70代以上の人は「昔の人が残した物は残さなきゃいけない」と思っていることが多いですが、そうした世代からの代替わりの時に捨てられることは多いですね。

 

小野寺 特に大正・昭和の物などは、大した価値がないと思って捨ててしまいがちでは?

 

木村 そういう傾向はありますね。「お金になる・ならない」の観点でいけば、世の中は今、昭和のいわゆるレトロものをもてはやしているので、大正・昭和の物も需要があります。

 

小野寺 昭和の物が骨董の世界でも需要があるんですか?

 

木村 骨董そのものに明確な定義はなく、一般的には100年以上前の希少価値のある古道具などを言うので、大正・昭和期の物は骨董と言うのは難しく、扱わない骨董屋もありますが、私のように「生活骨董」をコンセプトにしている場合、レトロものも取り扱います。商売でもあるので、骨董と言いながら、「今の時代」で物事を考えなければいけないんです。

 

小野寺 例えば僕の実家に昭和13年に隣組3軒で共同購入した会席膳があるのですが、そういうものはどうでしょう?

 

木村 会席膳は「実用品」であり、骨董的価値はないです。今の私たちが使っている食器と一緒です。ただ、素材が木で、漆が塗られているので「高価なものだろう」というイメージを持ってしまいがち。会席膳の買取に関する問い合わせはたくさん来ますが、今は全く需要のない物ですから、基本的には買取はしません※1。需要がなければ商品になりませんから。

 

※1 「蒔絵(漆を塗った上に金属粉や色粉を「蒔く」ことで絵や文様を表す加飾技法)」が施されたものなどは買取対象になる場合もあり。

 

小野寺 僕の母親も「宝物が出てきた」と喜んでいましたが、そうではないんですね(笑)

 

木村 蔵や納屋にしまわれている物を「先祖が大事にとっておいた物」と解釈している方が多いですが、私たちの経験からすると、当時は「捨てられなかった」だけなんです。今のようにゴミ処理場があるわけではないので。だから納屋などに「押し込んでいた」んです。

 

小野寺 なるほど(笑)それを今の人たちは「先祖が大事にしていた」と勘違いしている、と!

 

木村 当時の人たちが本当に大事にしていたものは家紋が入ったものなどです。あとは「これは〇〇だから大事にしようね」という口伝があるもの。

 

小野寺 ではこの懐中時計はどうですか?父が他界した時に仏壇を整理していたらでてきて、僕の曾祖父のものらしいです。

 

木村 SEIKOの懐中時計ですね。おそらく昭和20~30年のもので、これ自体に希少価値はないですが、例えば後ろに鉄道関係の文字が彫られていたりすると、鉄道マニア向けの付加価値がつくわけです。ちなみに懐中時計はそれなりに高価なものでしたから、一般の農民などが持ち歩くものではなかったはずです。曾祖父さんはハイカラだったのかもしれませんね。

 

小野寺 「お金になる・ならない」の観点でいけば、これもお宝とは言えないということですね(笑)でも僕としては「農民で持っている人は少ない」そして曾祖父が「ハイカラな人だったのかも」ということが知れただけで嬉しいです。

 

木村 もしかしたら自分で購入したのではなく、もらったのかもしれませんよ。出兵の関係などで、というのも考えられます。

 

小野寺 出兵時の寄せ書きのようなものも出てきたのであり得ますね!

 

木村 テレビ番組などではよく、こうした先祖の遺品を「祖父が大事にしていた物なんですが…いくらするでしょう?」と聞いたりしますよね。見るたびに「え?価値を値段で聞くなよ」と思ってしまいます。どれくらいの価値があるか知りたいという気持ちはわかりますが、仮にそれが10円と言われたら捨てるんですか?という話ですよね。

 

小野寺 ファミリーヒストリーですから、僕はさっきの曾祖父の懐中時計にしても、金銭的な価値はそれほどでないと分かっても捨てはしないですね。むしろより大事にしたくなりました。

 

木村 そう、金銭的な価値に関係なく「大事にしたい」という気持ちが芽生えたものはそのままとっておけば良いんです。逆に現代の人が「これは残しておきたい」という気持ちが芽生えない物は、しまい込み続けるのではなく、時代にあった処分の仕方を考えて良いんです。

 

小野寺 「処分」という行為に抵抗を感じるんですよね。

 

木村 「先祖の物を勝手に処分したら罰が当たる」と思いがちですが、私はいつも「そんな先祖はいません」と反論するんです。だって自分の先祖ですから。「俺たちが捨てられなかったもので困らせて悪かったな」と思ってるはずです(笑)。ただもちろん、「処分するな」という口伝があるものを内緒で処分するようなことはダメですよ。

 

小野寺 次の世代のために「本当に残したい物」と「捨てられずに残っているだけの物」を整理する、という感覚でしょうか。

 

木村 そうです。その時に「捨てる」のではなく、「欲しい人の手に渡す」という選択肢を持ってくれたら嬉しいです。私たち骨董屋は、古い物をそのまま可愛がってくれる、誰かから譲り受けてでも自分が守っていきたいという人と物をつなぐ「仲人役※2です。「お金になるかどうか」よりも「欲しい人がいるかどうか」で考えてもらえたら、需要がある物が「消費」されずに済むのかな、と。

 

※2 「〇〇時代の○○の作品を探して欲しい」など、コレクターの依頼に応じて当該品を探し、持ち主とマッチングする役割を担うことも多い。そのため、かつては農家の家などを周り、当該品が蔵などに収蔵されていないか、拝見させていただくこともあったとか。

 

小野寺 「捨てる」か「大事にしてくれる人を探す」か。お金はその次なんでしょうね(笑)

 

【後編はこちら】

(有)好観堂骨董店

 住所 一関市山目字十二神123-2 

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