毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第82話(idea 2026年1月号掲載)
今月のテーマ
毎年、敬老の日が近づくと厚生労働省から「住民基本台帳に基づく百歳以上の高齢者の総数」が発表されます。令和7年の発表では9万9,763人。いよいよ10万人の大台が目前に迫ってきました。これは医療技術の進歩と介護環境の充実がもたらした賜物であり、喜ばしいことですが、同時に「人生100年時代」という言葉が、単なるスローガンではなく現実として私たちに迫ってきていることを意味します。もちろん個人差はありますが、かつて稀だった100歳という年齢が、これからは当たり前の景色になっていく。私たちは、そうした‘これまで見たことのない景色’が広がる時代を生きているのです。
変化の波は、寿命の長さだけではありません。生成AI(人工知能)の急速な普及もその一つで、最近では業務効率化のために活用する人が増えています。このコラムもAIに任せることができれば便利なのかもしれませんが、書き手の熱量や地域への想いなど、AIには汲み取れない部分があるため、地道に書いては消しを繰り返し……AIのようなスマートさはありませんが、人間臭い感情をしたためています(笑)
さて、刻一刻と変化する現在、これまでの「当たり前」が通用しない時代と言っても過言ではありません。今、私たちは、自身の固定観念を変え、新しい現実を「受け入れる勇気」が試されています。
例えば、令和のコメ騒動。物価高騰の最中、コメ不足となり価格が急騰しました。政府備蓄米が放出されましたが、店頭価格は高止まりしています。「農家が出し渋っている」といった心ない噂も耳にしますが、現場の実情は違います。私たちのような兼業農家は、収穫の大部分をJA等へ出荷しており、手元に在庫を抱えていません。もしコメがあるならば、地域のニーズに応えて出したい。けれど、無いのです。確かに米価は上がりましたが、冷静に考えれば、これまでの価格が安すぎたという側面もあります。肥料代、農機具の燃料代、資材費など、コメを作るためのあらゆる経費が、社会全体の物価上昇に伴い高騰していることも理解していただきたいです(消費者としての視点では、「コメはこのくらいの値段で買えるはず」という固定観念があるため、値上がりに抵抗感を覚えるのは当然ですね)。通信費やガソリン代も同様です。スマートフォンは今やライフラインとなり、かつての固定電話代とは比較にならない通信費がかかります。レギュラーガソリンが90円台だった時代を知る世代からすれば、今の価格は目が飛び出るほどでしょう。それでも私たちは、生活に不可欠だからこそ、渋々ながらもその変化を受け入れ、適応しています。
「地域づくり」においても、「受け入れる勇気」が求められるような、大きな転換期にあります。かつて人口が多かった時代、何をするにも人が集まり、飲み食いして親睦を深め、地域は自然と回っていました。しかし今はどうでしょう。人口減少に加え、個人情報保護法の壁、そして「多様性」という言葉。これらは時として、地域活動への無関心を正当化する盾として使われます。かつての成功体験を持つ世代にとって、この関係性や新しい価値観を受け入れることは、容易ではありません。勇気というより、これまでのやり方を捨てる「覚悟」が必要です。それでも、私たちは根気強くやっていくしかありません。昔ながらの「飲みニケーション」が通用しないなら、まずは「挨拶」から。顔なじみになることを目的に、地道に声をかけ続け、信頼関係を築いていくしかありません。
「なぜ距離を縮めなければならないのか?」と問われるかもしれません。答えはシンプルで、有事の際、顔も名前も知らない相手とは、命を守る連携が取れないからです。普段全くコミュニケーションを取らず、地域に関わろうとしなかった人が、いざ避難所に来て「権利」だけを主張し、我先に物資や電源を確保しようとしたら、周囲はどう感じるでしょうか。地域の避難所運営には、お互い様の精神と一定のルールが存在します。「困った時だけ助けて」という都合の良い理屈は通用しません。
だからこそ、声をかけられる側の人たちにも、心を閉ざさず「受け入れる勇気」を持ってほしいのです。損得勘定ではなく、‘誰かと支え合っている’という感覚を持つこと。時代が変わり、物価が上がり、技術が進歩しても、最後に私たちを守るのは「人とのつながり」です。変化を嘆くのではなく、新しい時代の厳しさも不便さも、そして新しいご近所付き合いも、まずは「今はそういう時代なんだ」と受け入れることが、私たちの生活をより良いものにしてくれるはずです。
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