(idea 2025年11月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

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~知られざる「獣医師会」の世界【後編】~

「動物福祉」を正しく認識するために

「動物いのちの授業」の様子

佐藤敏彦(さとう としひこ)

さとう動物病院(一関市宮下町)獣医師・院長。平成元年に同院を開業。令和7年度より岩手県獣医師会一関支会の支会長となる。

 

本江玄佳(ほんご はるか)

ほんご動物病院(一関市萩荘)獣医師・院長。平成13年に獣医師となり、平成17年より父が開業した同院を継承。平成26年より同院院長へ。

 


 

 

対談者 一般社団法人岩手県獣医師会一関支会長 佐藤敏彦さん 

                 一関支会員 本江玄佳さん

 

聞き手 いちのせき市民活動センター  センター長 小野寺浩樹

 

 


 

「動物病院の先生」が身近な獣医師ですが、「産業動物臨床(開業/勤務)」「小動物臨床」「畜産・家畜衛生」「公衆衛生」と、職域は幅広く、獣医師が任意で加入する「獣医師会」でも、その職域に応じた部会で事業を行っています。今回は小動物臨床の現場から、我々市民も関心を持つべき実情や、今後の課題について、2人の獣医師にお伺いしました(2回シリーズの後編)。

 

 

小野寺 多頭飼育崩壊などペットの飼養(飼育)環境をめぐる課題が顕在化してきていますが、獣医師会としてはどのような取組をされていますか?

 

佐藤 多頭飼育崩壊自体は、保健所や保護団体などが現場に入っているので、我々が第一線で動くことはないです。多頭飼育崩壊は、動物ではなく、人間の問題です。獣医師会としては適正飼養の推進を呼びかける活動を続けています。

 

本江 一関支会では「動物いのちの授業」と題し、小学校低学年への啓もう活動もしています。しつけされた動物を学校に連れて行き、飼い方の説明をしながら、「ちゃんと最後まで責任をもって飼おうね」と、終生飼養についても説明しています。

 

小野寺 子どもたちは意外と敏感だから、良い機会ですね。むしろそういうことを忘れてしまっている大人にこそ、教育しないといけない気が……。

 

佐藤 大人の感覚を変えるのは難しいので、そうならないように、子どものうちに理解をしてもらおう、と。ただ、適正飼養の考えはだいぶ浸透してきているので、昔と比べるとずいぶん飼養環境は良くなりましたよ。

 

本江 犬を放し飼いにしない、猫を屋外に出さないなど、そういう認識も浸透してきているので、糞の処理などのマナーの部分もかなり改善されていますね。

 

小野寺 確かに放し飼いの犬は見なくなりましたね。ちなみに犬猫も長寿命化していると聞きますが、実際どうですか?

 

佐藤 延びてますね。環境や食事が良くなったことによると思いますが、最近は要介護犬も増えてきました。認知症のような症状が出たり、歩くのが困難になったり。オムツをしている子も多いですね。

 

小野寺 犬にも認知症のようなものがあるんですね。そうやって長寿命化したり、介護も発生するかもと思うと、中高年層がペットを飼い始めるタイミングは慎重になるべきですか?

 

佐藤 「この子が最後よ」と言って飼っている中高年層は多いですね。

 

本江 ただ、年を取ってからこそ感じる動物やペットの温かみ、癒しっていうのもあると思うので、まだ元気で動物を飼える年齢なのに、先のことを考えて諦める……というのは、問題が違うのかなと思うんです。高齢になって自力では飼えなくなったときに、手伝ってくれたり、次につないでくれる支援があれば良いんじゃないかな、って。

 

小野寺 確かに。飼い主に先立たれるというのは、高齢じゃなくてもあり得ることですしね。

 

本江 そうですね。例えば、高齢者がペットを迎える時は、子猫・子犬から飼うんじゃなく、誰かが飼えなくなった動物を飼う、とか。

 

小野寺 なるほど!高齢でペットを飼うことをためらっている人と、ある程度の年齢になった犬猫をマッチングするような仕組みがあれば、お互いに良いかもしれませんね。

 

佐藤 市内にも保護団体が3つあり、そういうことも考えているかもしれませんが、あくまでもボランティアですし、手が回っていないようです。

※ 「第二種動物取扱業」として届け出をしている団体・個人の数。届け出を必要としない10頭未満のイヌ・ネコの保護活動をしている個人・団体については、保健所等でも把握していない。「第二種動物取扱業者」とは、動物の譲り渡し、保管、貸出し、訓練、展示を業として行う者であり、営利性を有する場合については、「第一種動物取扱業」となる。

 

小野寺 保護団体が増えれば良いという問題でもないですしね。保護される動物を減らさない限り、根本的な解決にはならないですから……。

 

本江 コロナ禍でペットブームが来て、犬よりも手がかからない猫を選ぶ人が増えているようです。だからこそ、猫は屋外に出さずに飼ってほしいです。ペット全体の数は減っていますが、人口減ほどの勢いで減ってはいないですし、体感として猫の患者は減っていないですね。

 

小野寺 人間界では人口減で医師不足に陥っていますが、獣医師界ではどうなんですか?

 

佐藤 大動物は減っています。小動物の開業医は、今は西磐井エリアだけです。東磐井エリアは元々小動物の開業医は1つだけで、あとは牛の獣医師が、犬などを診ていたようです。そういう先生たちも高齢で辞めてしまっています。

 

小野寺 今は何とかなっていますが、これから先、獣医師不足が深刻化する可能性があるということですかね。

 

佐藤 小動物は医師不足と言って良いか悩ましいですが、牛に関しては深刻ですね。

 

小野寺 岩手は酪農もブランド牛も力を入れているのに……。

 

本江 獣医師は全国で年間千人ほど誕生しますが、大動物の獣医師の受け皿が少なかったり、あっても収入や職場環境などが十分でないため、大動物の臨床に進めない現実があります。

 

小野寺 一関市内も減っているとは言え、まだ牛農家は多いですから、そういう現状は市民も知っておくべきですね。最後に、今後、一関支会として力を入れていこうと思っていることなどはありますか?

 

佐藤 3・11以降、災害時にはペットの同行避難が勧奨されるようになったものの、大船渡の山火事発生時など、現場で混乱が起きたと聞いています。一関支会としては、今後、当市での同行避難の可否など、ペットを飼っている人に周知していく必要はあるのかなと感じています。

 

小野寺 一関市だと、旧町村単位で1か所ずつは「ペット受け入れ避難所」を開設するようになったようですが、確かに周知は不十分ですね。

 令和7年4月1日現在、萩荘市民センター、厳美市民センター山谷分館、狐禅寺市民センター、金沢市民センター、大東保健センター、千厩市民センター、東山総合体育館(クラブハウスえぽっく)、室根曲ろくふれあいセンター(土砂災害時、地震時のみ開設)、室根体育館(水害時のみ開設)、川崎農村環境改善センター、藤沢市民センターが「一関市ペット受入れ避難所」となっている。ただし、実際に開設される避難所は、災害の内容や規模によって異なる。管轄は一関市「防災課」。

 

佐藤 実は我々もその情報を詳しくは知らないんです。何か起こった時には遅いので、その前に準備しておかなければいけない問題ですよね。

 

小野寺 行政や消防の縦割りになってしまっていることがまずいですね。獣医師会と連携していくべき問題は多方面にあるんだなと考えさせられました。

 

 【前編】はこちら


 

一般社団法人岩手県獣医師会HP

https://www.ivma.jp/

 

一般社団法人岩手県獣医師会 一関支会

 0197-23-8211

(岩手県県南家畜保健衛生所内)