(idea 2022年11月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

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「安全」に対する「知識」を

~草刈り作業を理論的に見つめ直して~

「刈払機取扱作業者安全衛生教育」学科の様子 (講師:村上敬一氏)

「刈払機取扱作業者安全衛生教育」学科の様子

(講師:村上敬一氏)

村上 敬一さん

 職業訓練法人東磐職業訓練協会の専務理事であり、一関市より委託を受けて管理運営を行う「両磐地域職業訓練センター」では「刈払機取扱い作業者安全衛生教育」の講師も担う。千厩町千厩在住で、中山間地域等直接支払制度(以下、中山間事業)の協定を結ぶ「千厩町第4区農業集落」の事務局長を長年務めるなど、公私ともに刈払機作業に精通。

対談者 東磐職業訓練協会 専務理事 村上敬一さん   

   

聞き手 いちのせき市民活動センター  センター長 小野寺浩樹

 労働災害を防止するため、労働者の就業にあたって必要な安全衛生に関する知識等を付与するために実施する「安全衛生教育※1」。労働者に対し、事業者が教育機会を与えることを求めるものですが、その中には「刈払機取扱作業者」も含まれます。最も身近な農機具と言える「刈払機」における「安全衛生教育」の必要性について、「刈払機取扱作業者安全衛生教育※2」の講師にお伺いしました。

 

※1 労働安全衛生法の59条~60条に規定。

※2 学科教育5時間、実技教育1時間のカリキュラムが定められている。

小野寺 自治会や地域協働体などで高齢者宅などの草刈りを行なったり、草刈りを有償で代行する有志グループを結成する動きが増えてきました。その際に「資格がないとダメなのでは」という話題が出てくることがあります。まずはその答えを教えてください。

 

村上 「刈払機取扱作業者」に対する「安全衛生教育」を指していると思います。技能講習の資格とは異なりますが、平成12年に国から「安全作業をするために講習を受けることが望ましい」という通達が出たんです。要は法令的な作業資格ではなく、事業者に求められる安全衛生教育の一つという位置づけです。

 

小野寺 資格ではないんですね。ではどういう人が受講の対象なのでしょうか?

 

村上 基本的には「それでお金を得ている人」「仕事として刈払機を使用する作業に従事する人※3」が対象です。ここでも年間約150人が受講していますが、その多くは会社からの派遣です。

 

※3 事業主が従業員に刈払作業を行わせる場合を指す。

 

小野寺 刈払機を仕事で使う人たちが、雇用主から教育機会を与えられるということですね。

 

村上 そう、労働安全衛生法の中で、事業主は作業従事者に教育を受けさせなければいけないという規定があるんです。なので森林組合や土木業者、建設会社の人たちが来ます。他方で、中山間事業の人たちも来ますよ。

 

小野寺 僕の地域の人も受けてきたと聞きました。中山間事業も「従事者」にあたるんですか。

 

村上 確かに日当をもらう地域もありますが、厳密には従事者ではありません。中山間事業での事故が多いことから、市が安全教育の受講を斡旋しているんです。それで、5年前から市と連携し、出張講習もするようになりました。

 

小野寺 地域に出向いて刈払機の安全講習をしてくれるということですか?

 

村上 原則15人程度の受講者がいる場合にではありますが、これまでに厳美地域や大東、藤沢など、35団体で行いましたね。

 

小野寺 講習はどのような内容ですか?

 

村上 大きく分けると「安全の確保」と「振動障害防止」という2つの柱があります。エンジン式の刈払機は「振動工具」なんです。振動障害※4を発症する可能性もあるので、その予防に関する知識もお伝えしています。

 

※4 振動が手・腕を通して身体に伝達されることにより生じる、手指等の末梢循環障害、末梢神経障害、運動器(骨、関節系)障害の3つの障害の総称。

 

小野寺 振動障害!あまり意識したことがないですね。

 

村上 振動障害はチェーンソーや土木工事で発症することが多いですが、刈払機も可能性はゼロではないので、国の通達では刈払機の作業時間は最大4時間以内という規定があるんです。

 

小野寺 一日中草刈りしてる日もあります(笑)4時間じゃ草刈り終わらないですよ。

 

村上 農家さんはみんなそう言います(笑)なので、例えば30分連続作業をしたら5分以上の休憩時間を取るとか、そういう指導をしています。あとは防振手袋の着用を促したり。

 

小野寺 実際、振動障害を発症する人は多いんですか?

 

村上 振動工具全体で見ると、全国で毎年2百人近く労災認定されているようです。ちなみに、20~30代に振動工具を頻回に使用した人が、40代になってから発症するケースもあり、1年以上治療している人は全国で5千人くらいいるようです。ただ、根本的な治療方法が確立されておらず、完治はしないようです。

 

小野寺 そう聞くと予防の必要性を認識しますね。もう一方の「安全の確保」についてはどのような内容ですか?

 

村上 例えば「キックバック」ですね。キックバックによって他者を傷つけぬよう、5mを危険区域として、その中は他人をいれず、複数で草刈りをする時は5m以上離れて作業をすること。また、斜面で作業する際には上下に重ならない、とか……。

 

小野寺 僕も河川の草刈りに出た時、いつもの感覚である程度刈り進めて戻ろうとしたら、他の人に「行け!戻って来るな!」って手で合図されて。暗黙のルールで一方方向に刈ると決まっていたようですが、新参者は知らないんですよね。

 

村上 集団での草刈りで欠けているのは「作業前の打ち合わせ」なんです。来た順に作業を始めてしまったりして。でも本来は、開始前に集まって、参加者の顔色をうかがって、青い顔してる人がいれば「今日はやめておいた方が良いよ」と注意しなきゃいけないし、機械の確認もすべき。最低でも刃だけは揺すってみたり、安全装置を外しているものは使わせない※5、とか。あとは道路沿いの工作物には事前に目印をつけておき、開始前に注意するとか。

 

※5 作業者に飛散物が飛ばないようにする飛散物防護カバーなどを、作業がしにくいという理由で外してしまう人もいる。

 

小野寺 確かに、中山間事業や集落の草刈りは機械の持ち寄りが多いですからね……。

 

村上 そう、持ち寄りということは、人によって管理の仕方が違うということ。機械の点検をしたことのない人も多いです。

 

小野寺 そういうのって家庭の中で親から子へ教えられていくものだったので、自己流も多いでしょうし、わざわざ講習に行くという感覚がないですよね。

 

村上 私も以前はそう思ってましたが、事故事例などを見聞きするにつれ、なんとかしないといけないと思いました。安全作業は見て覚えるだけでなく、「安全に対する知識」がないと、事故防止ができないんですよ。

 

小野寺 集落などへの出張対応もしているということですし、自治会行事などで安全講習を盛り込むような機運が必要ですね。

 

村上 集落の仲間同士で学ぶと、その後に注意し合うなど、教育効果は非常に高いです。自治会の皆さんにも受講していただきたいですね。

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