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負担を減らし、参加しやすい自治会活動へ

(idea 2025年8月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

 

令和7年6月8日 花苗植えや草刈りを終えた後の「さなぶり交流会」の様子

写真:花苗植えや草刈り作業等を行った後の「さなぶり交流会」料理担当は男性陣

(令和7年6月8日)  

 

基本情報

長者自治会(摺沢)

 一関市千厩町方面から大東町へ向かう道のり(国道456号線)、その北東にある摺沢字北長者の全域、同南長者と樋の口の一部を含んだエリアが同自治会の範囲。25世帯、103人が暮らす。4班体制で、総務・教養文化・女性の3部会がある。

 

「水晶の里」として、集落の歴史を後世へ

 

 地名や自治会名である「長者」は、江戸時代の豪農「菊地家」に由来します。菊地家初代の菊地対馬は、摺沢源八の菊地家から摺沢村永澤(長者集落の旧地名)に別家して以来、財を成し、大いに繁栄します。三代目の彦左衛門は、寛永19年の検地帳で県下第二位にあたる27町もの広大な土地を所有するなど、その屋敷は「長者屋敷」と呼ばれていました。その富と影響力から、地域の人々から「長者様」と呼ばれ、その名は地名として今に残されているのです。

 

 また、同自治会の区域は、摺沢の地名由来の一つとされる「水晶」が採掘された集落でもあり、隣接の千厩町奥玉地域とは、歴史上の深いつながりもあります。

 

 平成19年には、中山間地域等直接支払制度を活用し、集落の歴史的背景を後世に残そうと「里づくり部会」を設置し、「水晶の里づくり」に着手。「長者マップ」や「水晶の里看板」の製作、多世代交流等を実施してきました。現在も景観維持に力を入れており、「個々の敷地も自治会としても綺麗に保てているのは自慢ですね」と、自治会長の佐藤隆博さんと副会長の藤野淳一さんは語ります。

 

 平成29年には、多面的機能支払制度事業に取り組むため、「大東長者資源保全会」を発足。過去に里づくり部会で整備してきた長者マップや水晶の里看板の補修事業を同保全会が行いました。

 

 佐藤さんは、「農村集落だからこそ利用できる制度も活用しながら、集落の横の連携を強化し、人口に限りがあるので『一人一役・輪番制』※を新たに掲げ、できるだけ行事も役職も負担がかからないように努めています」と続けます。

※ 平成31年3月に開催された総会で自治会役員選任に関する課題等が議論され、解決策を今後の申し合わせとした。

 

 

「自治会とは何か」を再確認し、共通認識を図る

 

 人口減少が進む中、役の担い手不足による役員の負担が顕著になり、総会や役員会などの話し合いの中で「自治会は本当に必要なのか」「そもそも自治会とは」など、自治会の在り方に関する問いかけが……。そこで、平成31年度の総会において、組織や事業にかかる実情や課題を共有し、「本当に大切なこと」を整理。今後の申し合わせとしたのです。

 

 「『役員は奉仕の精神で』を共通認識としつつも、ますます人が減ることが予想されているので、『負担をどんどん減らし参加しやすい自治会に』をモットーにしました」と、佐藤さん。  

 

 現在実施している「負担軽減」の具体は、①一日に各種行事(交流のほか、多面的事業と連携した環境整備・資源回収等)をまとめ年間行事数(日数)を減らす、②摺沢地域で行うスポーツ行事は多世代で参加可能な2事業のみに参加、③飲食を伴う事業を減らし女性部の負担軽減(総会後の交流会・お花見会・さなぶり会・収穫祭・忘年会・新年交流会と計6回あったものを、さなぶり交流会と新年交流会の2回とした)、④自治会役員の負担軽減(「一人一役・輪番制」のほか、役員会の時間を短縮し諸連絡はSNSを活用)、⑤行事時間を見直し、タイムスケジュールを事前共有することで日曜日のプライベートタイムを確保、⑥「長者さんさ踊り」の出演を限定。と、大きく分けて6つ。

 

 副会長の藤野さんは「自治会内で課題や実情を語り合えたことは良いきっかけになった」と振り返り、「長者の一番の宝は『子どもたちだね』と確認ができた。その子どもたちが住みやすい、大人になっても戻ってきたい『水晶の里』を持続したいという思いも共通認識できた」と佐藤さんも続けます

 

 

地域おこしの位置づけから歴史をつなぐ位置づけに

 

 昭和8年に石鳥谷町から赴任してきた警察官が縁で長者集落へ伝えられた「長者さんさ踊り」。第二次世界大戦中に一時中断したものの、戦後に復活を遂げ、昭和46年には自治会内に「長者さんさ踊り保存会」が発足。一時独立を経て、平成19年からは自治会(教養文化部)として継承しています。

 

 75周年記念祝賀会の開催や、コミュニティ助成事業を活用して浴衣や太鼓を一新するなど(平成26年)、精力的な活動を続け、これまで多くの出演依頼を受けてきました。しかし、出演するとなると住民総出の準備となり、大きな負担が……。そのため現在は定例的な機会にのみ出演を限定し、集落内での継承だけは途絶えぬよう、最低限の取り組みとしています。

 

 「魅せる舞」から「集落の歴史を語り継ぐ舞」となりつつも、「水晶の里」を後世へつなぐため、「無理のない活動」を「持続的」に取り組んでいます。

 

 

Q.集落の自慢は何ですか?

自治会長

自治会長 佐藤隆博(さとう たかひろ)さん

さとう たかひろ

佐藤 隆博さん

2期3年目。「今までの恩返し」として退職後に自治会長を引き受け、「負担軽減のための仕組みづくり」に尽力しています。

 

A.環境維持

 

副会長

副会長 藤野淳一(ふじの じゅんいち)さん

ふじの じゅんいち

藤野 淳一さん

1期1年目。自治会と連携する各種団体役員を経験し、令和7年度、副会長に就任。「他集落と比べ子どもの数が多いのも自慢の一つ」とのこと。

 

A.子供達

 

 

 

 


photo gallery

作業後のお楽しみ

地域紹介① 令和7年 女性部と大東長者資源保全会が連携し、花苗植え、資源回収実地後は、さなぶり交流会で乾杯!

女性部と「大東長者資源保全会」が連携し、花苗植え、資源回収等を実施。作業後は「さなぶり交流会」で乾杯!(令和7年)

 

畑を耕すと出てくる⁉

地域紹介③ 集落に隣接する鶴ヶ峰(玉堀山)から出てきた水晶。摺沢のち名の由来とされ、集落内の畑からも水晶が

 

 

 

集落に隣接する鶴ヶ峰(玉堀山)から出てきた水晶が、摺沢の地名の由来とされ(諸説あり)、集落内の畑からも水晶片が!

 

 

草刈り前の安全確認

地域紹介② 環境整備共同作業として大東長者資源保全会と長者衛生組合の連携で、草刈り実施。

花苗植え等と同日に、男性陣は環境整備共同作業として草刈りを実施。大東長者資源保全会と長者衛生組合の連携事業です。

 

未来へつなぐ継承の形

地域紹介④ 長者さんさ踊り 大東町内での出演2回と限定し負担軽減する事で、伝承を継続。

自治会総出で取り組んできた「長者さんさ踊り」は、大東町内での出演2回と限定し、個々の負担にならぬよう伝承を継続。

 


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