毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。

第16話(idea 2020年7月号掲載)

今月のテーマ

協議体と協働体

 前号で「地域包括ケアシステム」構築に向けた取り組みの1つとして、「生活支援体制整備事業」に各自治体が取り組むことが義務化された(平成29年度を持って事業執行猶予期間が終了した)ことを取り上げました。そして生活支援体制整備事業が目指すのは「生活支援をはじめとしたさまざまな‘場(機会)’‘仕組み’を‘地域住民みんなで’創り出していく」こと、と、大きなイメージ的なものだけに触れました。

 では実際、どのような手順で生活支援体制整備事業の仕組みづくりを進めていけば良いのでしょうか。その具体的な手順や考え方について、今月は5ページ拡大版で考えていきましょう。

  ※誌面の構成をもとにWEBでの閲覧用に編集しています。

 前回はこちら

「生活支援体制整備事業」 における 「協議体」とは

 「生活支援体制整備事業」は介護保険法の第115条の45第2項第5号に記されています。この事業は、高齢者を含む地域に住む人々を、地域の人が支える「地域での支え合いの仕組み」を構築することが目的です。

 生活様式の変化などに伴い、地域での暮らしに関する課題は山積し、行政や介護事業所が提供する規格のあるサービスではカバーできない課題も見受けられる状況の中、地域の誰もが安心して暮らせるよう、行政や介護事業所のサービスに対する車の両輪として、「地域の支え合い」の仕組みを作ろうとするものです。

 

  具体的に見ていくと、生活支援体制整備事業の実施内容の一つに、「協議体の設置」という内容が盛り込まれています。「協議体」はピラミッド形式になっており、「第2層」の協議体は「日常生活圏域」というおおむね中学校単位の区域で設置することが想定されていますが、必ずしも中学校区単位ではなく、「地域で支え合える範囲」という捉え方で、地域の特性に応じて柔軟に対応できることになっています。 一関市では、協働のまちづくりの一環として、すでに市民センター単位で「地域協働体」が設立されており、各地域協働体が「地域づくり計画」も作成していることから、その地域に住む人が自分たちの生活の範囲と考えた区域として、「地域協働体」の範囲を「第2層協議体」と捉えています。

 

 また、上記の「地域における支え合いの仕組み」を推進するため、「生活支援コーディネーター(SC)」を設置することも同じく実施内容に明記されています。その役割は「多様な主体による多様な取組のコーディネート業務」とされ、当市でも令和2年度には第2層の生活支援コーディネーターを5名配置。

 SCは、「地域支え合い推進員」という言い方もしますので、「地域住民の支え合いを支援する(創り出す)役割」を担います。

一関市における生活支援体制整備事業のイメージ

 第1層を市全体、第2層を市民センター(地域協働体)単位、段3層を自治会・行政区単位とし、第2層に生活支援コーディネーター(SC)を配置

「地域協働体」と「協議体」のすみわけ

 さて、すでにできている「地域協働体」と上述の「協議体」、いったい何が違うのでしょうか? 

 一関市では協働のまちづくりの一環で、地域づくり活動の推進母体として平成25年から市民センター単位での「地域協働体」の設立を進めました。厚生労働省が「生活支援体制整備事業」を含めた「総合事業」を‘全市町村が遅くとも平成29年4月までに開始する’としたのが平成27年。つまり、一関市においては「地域協働体」が各市民センターレベルで設立された矢先に、同じようなエリアで「協議体」を設置するという話が出てきてしまったのです。しかも、「地域づくり」と「生活支援」で分野も異なるように見えるため、‘協働体を作った上に更に協議体を作るのか?’と、行政職員含め、大きな混乱が生じた時期も……。

 

 当然のような混乱ですが、結論から言えば、一関市においては「地域協働体」のほかに「協議体」を組織化するようなことは検討しておらず、地域協働体はじめ、地域の既存の枠組みを活用する方向で動き出しています。なぜなら、協議体の目指す姿は、地域協働体で取り組む内容と類似しているからです。生活支援体制整備事業は、‘介護保険制度で行う地域づくり’とも言われ、地域づくりという多岐にわたる内容の中の生活支援に特化した取り組みになるので、制度の目的や性格の違いを理解し、上手に使いながら地域づくりを進めていくことが重要です。

「協議体」 に期待する機能

 地域協働体では、市民センター単位での地域づくりを進めるために「地域づくり計画」を策定し、課題解決に取り組んでいます。計画に盛り込まれた分野は「コミュニティ」「福祉」「安心安全」「子ども子育て」「文化歴史」「産業」など、その範囲は多岐に渡り、全てを協働体の中で担うことは難しいことは明らかです。

 

 特に福祉分野は、手を付けてはみたものの、具体的な課題解決方法までは結びつけられていないという地域が多いように見受けられます。そこに「協議体」という生活福祉分野に特化した取り組みが地域の中で動き始めれば、地域協働体だけで課題解決を図らなくても良くなり、負担の軽減につながるという効果が期待できます。

 

 ただし、誤解してはいけないのが、生活福祉分野が協働体から完全に手が離れるというものではないということです。どちらも目指す姿は同じであり、連携(役割分担)をすることが必要不可欠です。ではどのような連携が考えられるでしょうか?

協働体と協議体の目的・構成員・取り組む分野
一関市における「地域協働体」と「協議体」のイメージ

「協議体」のイメージ① ~協働体の中に協議体の機能があれば~

とある集落で増えてきた課題

ひとり暮らしのおばあさん

申し訳ないけど若い人も家にいないから、地域の環境整備活動には誰も参加させられないねぇ…

集落住民の高齢化

加齢とともに身体も弱くなり、家の周りの草刈りも限界が近づいてきた…

 

 


高齢化や人口減少により課題はますます深刻に...

悩める自治会長

集落内住民の高齢化により増えてきた環境整備に関する課題。人口減少により、今後ますます問題は深刻化することが予想されます……。

 

同じような課題を持つ集落が多いことから、自治会長たちは地域協働体で課題解決策を議論できないものかと考えました。

 

地域協働体で地域の共通課題として話題にあげたけど...

課題解決に悩む協働体

 自治会長たちからの声を受け、地域協働体では取り組むべき課題として話題にあげることに。

 

 しかし、現状の協働体の構成員は、自治会長や区長、地域内の各種団体の代表者…と、けっきょく悩みを抱えた立場の人たちが、改めて悩み直すような状態に……。

 

 つまり、福祉関係の部会があったとしても、現状の構成員では実態把握が難しく、専門的な知識も乏しいため、有効な課題解決策をまとめるには戦力が足りないというのが実情……。

もしも地域協働体の中に「協議体」の機能があれば...

協議体の例

 草刈りや雪かきだけでなく、電球の交換や家財道具の移動も難しい人が増えているなど、より詳細な実態が共有されました。その上でどんな仕組みが必要なのか考えたところ、まだまだ動ける元気な高齢者に協力できる範囲で参加してもらえる「助け合い隊」を結成したらどうか?となりました。「助け合い隊」でカバーできないことは福祉関係の専門機関などに協力をもらう流れもできました。

【メモ】「協議体」の構成員には生活福祉の専門機関を入れられる

 「協議体」のメリット・うまみは、介護事業所などを構成員に加えられること。厚生労働省の実施要綱には構成団体のイメージが以下のように記載されています。

協議体は、市町村、地域包括支援センター等の行政機関、生活支援コーディネーターのほか、NPO法人、社会福祉法人、社会福祉協議会、地縁組織、協同組合、民間企業、ボランティア団体、介護サービス事業者、シルバー人材センター等の地域の関係者で構成され、この他にも地域の実情に応じて適宜参加者を募ることが望ましい。(中略)地域の実情、ニーズに応じて配食事業者、移動販売事業者、移動支援団体等、地域の高齢者の生活を支える上で必要不可欠な民間企業等も参加することが望ましい。(厚生労働省「地域支援事業実施要綱」より抜粋)

 地域協働体の中に協議体の機能を持たせる際には、オブザーバーとしてそうした専門知識を持った方々を迎えいれることで、地域の力だけではできないことを補完してもらえます。部会制をとっていない協働体においても、役員会や全体会などがその機能を果たすことができます。

 

 また、活用できる地域資源がない場合は、開発をすることも必要です。地域資源の把握や実際の旗振り役は自治会等との関係が深い「地域協働体」が得意とする部分であり、生活支援の仕組みを議論することが得意な「協議体」と両輪であることが望ましいと考えます。

身近に寄り添う存在とその活用

 生活支援の仕組みづくりには人口や区域の差を補完する「自治会をこえた広域の仕組み」を創り出す必要があり、上記で触れた「SC(生活支援コーディネーター)」は、そうした仕組みづくりを支援する存在です。

 

 一方で、一人暮らし高齢者や生活に困っている人など、なかなか近隣住民では介入できない課題が自治会内に存在する現状も。そんな時には、「民生児童委員」や社会福祉協議会が配置する「地域福祉コーディネーター(=コミュニティソーシャルワーカー(CSW))」が頼りになります。生活の困りごとに寄り添う専門的な役割なので、個人に寄り添い、地域の個別課題を拾い上げ、それを専門分野へつなげたり、広域的なコミュニティアプローチへと構築してくれます。

一関市におけるSCとCSWの所属や役割など

一関市における「生活支援コーディネーター」と「地域福祉コーディネーター」

生活支援コーディネーター

【別称】地域支え合い推進員

【略称】SC

【所属(配置先)】

一関地区広域行政組合(長寿社会課)

【設置根拠】

生活支援体制整備事業(介護保険法)

【役割】

・高齢者が日常生活で必要とするサービスの把握(地域課題及び資源)

・支え合い活動の支援や担い手の養成

・住民主体によるサービスの検討や整備の支援

【配置人数(令和2年度)】

5名(旧町村単位での担当制/兼務あり)

地域福祉コーディネーター

【別称】コミュニティソーシャルワーカー

【略称】CSW

【所属(配置先)】

一関市社会福祉協議会(地域福祉課/支部)

【設置根拠】

一関市地域福祉活動計画

【役割】

・福祉サービスでは解決が難しい問題や、複数の課題が絡み合った問題などに対し、専門機関と連携して対応(個別支援)

・個別課題を地域課題と捉え、地域で解決していく仕組みづくり支援(地域支援)

【配置人数(令和2年度)】

6名(旧町村単位での担当制/兼務あり)


 身近に寄り添う民生児童委員やCSW、広域の仕組みを創り出すSCの連携により、支え合いの地域社会の実現が期待されます。当市の現在の地域づくりと生活福祉の体制に、SC、CSWが機能する領域を加えてみると、下のようなイメージになります。

主な主体と各領域(イメージ)

 また、それぞれの役割を上記の【 協議体のイメージ①】 に付け加えると、草刈りが困難になってきているなど住民の感じる課題をCSWが収集、広域をサポートするSCが地域全体の課題にすべく会議で示し、議論につなげていきます。

 この話し合いの場・機能が「協議体」であり、「地域協働体」との連携が求められてきます。

「協議体」のイメージ② ~地域ケア会議連動型~

とあるひとり暮らし高齢者が抱える生活課題

外出が困難なひとり暮らし高齢者Aさん

足を骨折してしまった一人暮らしのAさん。退院後、ゴミを出したり、買い物に行くことが難しくなり、生活に支障が出始めました。

ご近所さん

「行動が制限されることで認知症を患うケースも多いようだし、ケアマネジャーをつけた方が良いんじゃないか?」「むしろ施設に入った方がAさんのためじゃない?」


民生児童委員も状況を気にしはじめ...

民生児童委員

 近所の人たちの声に民生児童委員さんも状況を気にし始め、高齢者福祉に関連する専門家が集まる「地域ケア会議」で話題にしてみました。

 

※地域ケア会議=地域包括支援センター等が主催する高齢者個人の個別ケースの課題解決を図りつつ、地域共通課題を明確化していくための場(手法)。

 

「地域ケア会議」で話題にすることに...

地域ケア会議のイメージ

ケアマネージャー 「その状態なら入所や通所の支援計画立ててあげられますけど……」

包括支援センター 「Aさん、先祖代々の家を守ることが生きがいと言っていたし、本当に施設入所で良いのかしら…?」

地域福祉コーディネーター 「そう言えばあの地区でAさんのサポートできそうな事業を始めたはず!協議体で話題にしてみます!」

 

 地区内の団体や活動(地域資源)を活用すればAさんが地域での生活を続けられるかもしれないと地域福祉コーディネーターが共有。その方向性を協議体で検討してもらうことに。

協議体で生活支援の方法を話し合う

協議体の例

地域協働体 「庭の草取りや環境整備、力仕事などは地域協働体が始めた「助け合い隊」を使ってみたら?」

地元商店 「買い物が大変なら〇〇商店で配達サービスを始めたようですよ。うちの店でもお手伝いできることを考えてみますね。」

市民活動団体 「孤立を防ぐために手芸の〇〇クラブの活動に参加できるようにしてあげるのも良いかも。」

 

 地域ケア会議では収集が難しい地域内の様々な情報(資源)が共有され、Aさんが地域での生活を続けるためのアイディアがたくさん集まりました!その結果、Aさんは地域資源と福祉サービスを上手に組み合わせながら、住み慣れた家・地域で暮らしていけることになったのです。

【メモ】地域にある「人」や「取り組み」などの「資源」をフル活用する

  介護保険制度を使ってサービスを利用するのも有効ですが、介護保険のサービスだけで全ての困りごとが解決するとは限りません。以下も厚生労働省の実施要綱からの抜粋です。

(生活支援体制整備事業は)介護保険制度でのサービスのみならず、市町村実施事業や民間市場、あるいは地域の支え合いで行われているサービスを含めて市町村内の資源を把握し、保険外のサービスの活用を促進しつつ、互助を基本とした生活支援等サービスが創出されるような取組を積極的に進める必要がある(後略)。(厚生労働省「地域支援事業実施要綱」より抜粋)

 つまり、普段の生活では「地域にある取り組み」を使いながら、支え合いの仕組みを構築することが求められているのです。そのためには地域にある取り組みや人など「地域資源」の把握をすることが重要で、やはり地域協働体との連携が欠かせません。

 地域の課題や個人の課題が複雑化している今、「今までは」が通用するようでしない社会になってきています。行政等の公助や共助の部門が整っていたとしても、その隙間から漏れる課題は多くなっています。

 

 多様化する課題が山積する時代ゆえに、必要なのは地域内で連携しながら支え合う仕組み。地域内では実働を担うプレーヤー不足も囁かれていますが、プレーヤーの確保だけで地域づくりが進むかと言うとそうではありません。円卓会議のような「舵取り機能の領域」と、「プレーヤーの領域」とが揃っていることが重要であり、「協議体」のような「実働につながる制度」を上手に活用しながら地域づくりを進めていくことが、これからの地域づくりには必要です。

↓実際の誌面ではこのように掲載されております

idea2020年6月号 フクロウ博士 誌面P8
idea2020年6月号 フクロウ博士 誌面P9P10
idea2020年6月号 フクロウ博士 誌面P11P12

 

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