毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。

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第76話(idea 2025年7月号掲載)

今月のテーマ

 

地域運営の落とし穴 (60)

地域と行政のつながり

‘役割’が地域を支え、‘役割’が人と人をつなげる

 

 前回(2025年6月号掲載「地域の役割や各種団体の目的の再確認を!」)に引き続き、地域で担う各種役割について考えてみます。

 

現状は、人口減少の影響から‘役のなり手不足’が課題ですが、もう少し深い部分を考えると、“集落の規模”という課題も見え始めてきています。とは言え、集落を適正規模にしたところで、住民の理解がないと役は引き受けてくれないので、育成に関する部分は今すぐにでも始めておく必要があります。最近では「自治会の解散論」や、「役のなり手がいないならやめる論」が語られる事例もあるのですが、そう簡単に考えてよいのでしょうか?

 

 地域で担う各種役割は、‘集落オリジナルの役割’と‘行政や各団体と関係している役割’の2種類があります。仕分けしてみると後者の割合が高く、役割を受けられないなら断るという判断がされるようです。しかし、その関わりを断つことは本当に正しいのでしょうか。

 

 地域運営をより効果的に行うためには、地域と行政の強固な連携が欠かせません。行政は地域の声を聞き、必要な支援を提供する役割を果たします。一方、地域住民は行政に対して積極的に意見を伝え、協力を求める姿勢が重要です。例えば、地域で行われる活動や課題に対して、行政が資金援助や制度的な支援、時には人的支援を行うことで、地域の負担軽減や課題解決のスピードアップが期待されます。また、行政が地域のニーズを理解し、そのニーズに基づいた政策やサービスを提供することで持続可能な運営が可能となります。

 

 地域と行政のつながりを強化するためには、‘定期的なコミュニケーションと協議の場’を設けることが有効です。地域の代表者と行政の担当者が定期的に集まり、現状の課題や改善策について話し合うことで、双方の理解と協力が深まります。このような取り組みは、地域の声を反映した政策の実現や、行政からの適切な支援を受けるための基盤となります。現在、区長会議などが設けられていますが、453行政区もある一関市ですので、向き合う数が多いことと、地域によって状況が違うことから、踏み込んだ情報交換ができていないように感じます。

 

 合併以降、人口減少を見据えて集落を補完する「地域協働体(RMO)」を設立し、‘集落と地域協働体’が向き合い、‘地域協働体と行政’が向き合う仕組みを構築してきました。地域協働体(RMO)は、市民センター単位の広域自治組織なので、453行政区をカバーしています。よって、「地域の状況を把握した地域協働体(RMO)」と「行政」が、‘定期的なコミュニケーションと協議する機能’を充実させることができます。こうして地域と行政のつながりを強化することは、地域運営の負担軽減や持続可能な発展のために不可欠です。双方が協力し合い、地域のニーズに合わせた柔軟な対応を行うことで、地域の活力を維持しつつ、持続可能な未来を目指していくことが期待されます。

 

 しかし、地域と行政がつながっているかというと、上手くつながれていないのが現状です。地域も行政も、これまでの経験に頼りすぎてしまい、変化に応じた対応ができていないのです。

 

 「やらされている」「負担だ」のマイナス思考が先に出てしまう‘地域側の意識’と、課題が多様化、複雑化しているため‘地域と向き合う時間と人員がとれない行政’。どこかで隙間が生じてしまっているのです。ここに、地域協働体(RMO)という中間組織が調整機能を担い、「話し合い」や「つながっている成功体験」を創り出す必要があります。

 

 仮に、‘役のなり手不足’から、自治会組織をなくしたり、各種役割を担うことをやめたりした場合、私たちの生活はどうなるでしょうか?ゴミの集積所に回収されない放置ゴミや集積所の衛生管理、街灯や防犯灯の設置や維持、高齢者や子どもの見守り、道路の陥没等の危険箇所の把握や整備など、地域と行政がつながっているからこそ維持されているのです。自治会組織がなくなると‘個人レベル’でやることになるのですが、「誰かがやるだろう」と考え、誰もやらないことが予想されます。何よりも、自治会がなくなると、住民が顔を合わせる機会もなくなって、知らない住民だらけになり、家から出ることも不安になってしまいますね。

 

 私たち住民は、自治会などの地縁組織と行政がつながっていることで、安心安全の確保ができているということを忘れてはいけません。

 

 


 

 

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