秀衡塗工房 有限会社 丸三漆器

 漆を塗り重ねて作る工芸品の製造販売業として明治37年創業。木地作りから加飾・販売まで一貫して行う工房は県内唯一。初代で創業者の青栁清之助さん(現代表の高祖父)は、当時の衣川村で漆塗り技術を学び、その後、本家の屋号を由来とした「丸三漆器工場」を立ち上げ、御膳などを木地から製造しました。

 

昭和に入り主力商品であった御膳の需要が低迷すると、三代目の真三郎さん(祖父)がそれまでの職人技を継承しつつ「秀衡塗」を考案・製作。昭和54年には、四代目の一郎さん(父)が法人化、現代表は新ブランドの立ち上げ、情報発信や加工体験などにより「漆器をより身近なものに」と日々挑戦を続けます。

(idea 2020年8月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

世代を超えて受け継ぎ、新たな時代への挑戦

特別な漆器から普段使いの漆器へ

 「若い世代にも漆器を身近に感じ、普段使いとして触れてもらいたい」そんな思いから、漆塗りの可能性を広げる新ブランド「FUDAN」を立ち上げたのは平成30年のこと。「昭和30年代までは冠婚葬祭は各家で行なう習慣があったため、御膳や御椀などの漆器製品は需要がありました。昭和40年以降は生活スタイルの変化により、主としていた御膳の需要が低下。そんな中、漆塗り技術を後世に残せるような岩手ならではの工芸品をと三代目が考案したのが、当社の看板とも言える『秀衡塗※1』です」と語るのは、 現代表(5代目)の青栁真さんです。

 

 青栁さんは家業とは全く異なる分野に進学・就職しましたが「いずれは地元に戻り漆器の魅力やその技術を継承したいという気持ちはあった」のだとか。平成21年、家業を継ぐためUターンすると、商品企画や営業活動に従事。新ブランドの立ち上げには弟で塗師の匠郎さんも協力し、秀衡塗の原型である秀衡椀のふっくらとした温かみのある形をモチーフに、若者が受け入れやすいイメージで考案。「これをきっかけに漆器に興味をもつ方が増えれば」と期待を寄せます。

 

※1 昭和45年の岩手国体開催を機に、「岩手の工芸品として全国に伝えられるものを」と日展作家・古関六平氏に指導を受け製作。中尊寺やその周辺に昔から伝わる「秀衡椀」が由来となっており、雲形に菱形を組み合わせた有職文様に金箔が貼られ、光沢を抑えた漆本来の美しさを特徴とする塗り技術。岩手県の伝統的工芸品としても認定されている。

職人の技を間近で「体感」してもらうために

 同社の漆器は、木地作り・下地作り・漆塗り・雲地描き・絵付けなど15もの工程を全て同社の職人が手づくりで製作していることが特徴。「それぞれの工程で職人技が活かされている」と語る青栁さんは、「職人技を身近に感じてもらいたい、知ってもらいたい」そんな思いから「オープンファクトリー五感市※2」にも参加しています。

 

 実際に工房を訪れ、漆器づくりの工程、工房の香りや雰囲気、そして職人技を「五感で感じてもらう」ことが醍醐味の「五感市」ですが、今年度は、新型コロナウイルスの影響で「実際に来て体験」してもらうことが困難に。それでも「動画投稿サイト等を使って各工程の職人技を発信する方法も検討中です」と青栁さんは前向きです。

 

 市民センターや学校等などが主催する出前授業なども受け入れ、漆塗りの歴史・魅力発信や絵付けの体験なども行っている同社。「技の継承は職人だけではなく、まずは子ども時代に興味を持ってもらうことも大切だと感じています。地元でこういうことをしているんだということを知ってもらえれば」と青栁さん。

 今後も異業種との交流や共同企画、SNSを使った情報発信などにも力を入れ、一関市・大東町から全国・世界へ「秀衡塗・漆器」の魅力を発信していきます。

 

※2 一関市、平泉町、奥州市の伝統工芸をはじめとした地域産業の「ものづくり」の現場を、一般の方に見学・体験してもらうイベント

代表の青栁真さん

代表の青栁真さん

初代が開発した沈金を施した「明清塗」。

初代が開発した沈金(塗面に刃物で模様を彫り金粉を埋め込む技法)を施した「明清塗」。その技法は現代へも継承されている

創業以来変わらぬ工場兼店舗外観

創業以来変わらぬ工場兼店舗外観


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