「東山和紙」 800年の歴史とその魅力について

対談者 東山和紙の紙漉き職人 鈴木 英一 さん

聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺 浩樹

 東山町長坂の北山谷(きたやまや)集落で「東山和紙」の伝統を受け継ぐ鈴木英一さんに、地域に伝わる紙漉きの歴史や和紙づくりの工程、和紙の魅力などについてお伺いしました。

 

東山町に伝わる伝統の手漉き和紙

【小野寺】鈴木さんが紙漉きを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

 

放流

東山和紙の紙漉き職人  鈴木 英一 さん

 

【鈴木】私の家では先祖代々紙漉きをしており、知る限りでは明治時代以前から行われていたようです。そんな中、私が34歳の時に親父から「自分はもう歳だから、あとはお前(鈴木さん)がやれ」と言われ、紙漉きを継ぎました。子どもの頃から親父の紙漉きを見ていて「だいたいこうすればいいのか」と頭では思っていましたが、実際にやってみると難しくて。それから今に至るまでの43年、紙漉きをしています。

 

【小野寺】当時、紙漉きをされている方は多かったんですか?

 

【鈴木】ええ。この集落では、昭和30年代初期まで12~13軒の家で紙漉きをしていましたが、今は2軒にまで減ってしまいました。3村が合併して東山町になった当初は280軒ほど紙漉きをしていた家がありましたね。田河津には昭和40年代まで多くありましたし、長坂の里前とか、松川の野平にもありました。ですが、こぞって紙漉きをしていたのは、やはりここですね。

 

【小野寺】なぜ紙漉きをする家が減ってしまったのでしょうか。

 

【鈴木】軒数が減った理由は主に2つあります。当時の主な仕事は家の手伝いと農業で、農閑期の冬に紙漉きをしていたのですが、町内にセメント工場が誘致されると多くの人が紙漉きを辞め、そこで働き始めたこと。もう一つは洋風の家が増えてきたことによる和紙の需要減です。昔は障子や畳の部屋がある家ばかりでしたが、それが段々と減り、障子紙が売れなくなっていったんですよね。

 

 

「東山和紙」ができるまで

 

【小野寺】そもそも和紙はどのようにして作っているのですか?

 

【鈴木】和紙の材料は主に「楮(こうぞ)」と「トロロアオイ」(通称「ニレ」)の2つです。楮は私の家で自家栽培していて、毎年春に刈り取ります。切った場所から芽が出て、また1年かけて育ちます。トロロアオイは、紙の厚さを均一にするための粘液が根から出るのでそれを使います。昔はほかの家や市場などで材料を仕入れていた時期もありましたが、なにせ和紙が売れなくなってしまったので、今では自家栽培の分だけで確保しています。

 工程としては、まず切ってきた楮の表面の黒皮を包丁で剥いで、乾燥させます。使う時には釜で煮て、水に浸し、また煮てあく抜きをします。その時に小さなゴミを1つひとつ取り除いて、それを繊維の状態になるまで機械で叩いてほぐします。その繊維とトロロアオイの粘液を混ぜて、紙を漉きます。

 


背丈が3m以上に伸びた楮(左)とトロロアオイの根(右)

 

 

①                   ②


①漉き舟に水と原料をいれ十分にかき混ぜ、②次にトトロアオイの

粘液を漉して投入し馴染ませると、繊維同士が分離し均一に分散する。

③                   ④


③すげたを使い原料をすくい上げ左右にゆり動かして紙にし、

④漉き上げた順に1枚1枚重ねていきます。

【小野寺】紙を漉く段階になるまでにはすごく時間と手間がかかっているんですね。

 

【鈴木】実はそうなんです。さらに機械がない昔は全部手作業でした。私が子どもの頃は、夕方になると、次の日の紙漉きに必要な材料を棒で2時間ぐらい叩く「紙草打ち」をさせられたものです。周りの家も皆そうでした。夕方になると「トントントン」という紙草打ちの音が聞こえ始め、「ほら、隣の家でも始まったぞ」と。 

 今は1日に100枚~120枚しか漉きませんが、昔は障子紙なら1日に500枚も漉きましたよ。

 

【小野寺】「紙漉きは冬に行う」と話しておりましたが、夏はできないのでしょうか?

 

【鈴木】夏でもできないことはありませんが、夏は生産性が下がりますし、紙の品質も落ちてしまうんです。水温が少し上がるだけで、トロロアオイの粘り気が弱まりますし、漉ける枚数も半減してしまうんです。

 春先など暖かくなってから漉く紙は、立派な紙ではなく襖の下張りに張るような品質の低い紙なんです。昔はそれも売れましたが、今はほとんど売れません。昔は田植えが終わった頃の6月に漉いていた時期もありましたが、今は春も夏前も漉くことはなくなりましたね。

 

 

「丈夫で長持ち」が和紙の強み

 

【小野寺】鈴木さんが漉いた和紙はどんなところに納品されるんですか?

 

【鈴木】猊鼻渓の「紙漉き館」では観光客向けに紙漉き体験を行っていますが、私の和紙はここ10年ほど中尊寺で使っていただいており、毎年一定量の色紙の注文を受けています。色紙の厚さにするには、およそ4枚の紙を重ねて乾燥させて作ります。完成後、一定期間寝かせた紙の方が筆を乗せやすいということで、私は2年寝かせた物を納品しています。

 

【小野寺】こだわりがあるんですね。

 

【鈴木】ほかには、最近ですと一関市田村町の「旧沼田家住宅」の障子紙や、染め物屋さんの販売商品に付ける帯、一閑張りの素材にも使っていただいています。

 コピー用紙のような機械刷りの西洋紙は、木の芯を砕いて作っており、和紙は木の皮の部分だけを使うので、根本的に材料が違うんです。西洋紙は薬品で処理されており約100年は持ちます。和紙は繊維を使っているので、さらに長い期間持つんです。現存する900年前の藤原文化の巻物にも和紙が使われているんですよ。

 また、東山和紙は未晒(みざら)しの原料なので日の光に当たると時間と共に白くなっていくので、年数が経っても文字がきれいに見えます。障子紙でも10年は持ちますよ。なので、“東山和紙は丈夫で長持ち”だと言っているんです。

 


新農村建設事業で昭和35年に建てられた「山谷和紙共同作業所」

 

【小野寺】鈴木さんの家で代々受け継いできた紙漉きを、次に継ぐ人はいるんですか?

 

【鈴木】息子はおりますが、今のところ継ぐ予定はありません。紙漉きで家族を養えれば良いのですが、なかなかそうもいきませんし。

 

【小野寺】でも、技術的なものは受け継いでいく人が必要ですよね。

 

【鈴木】それで今、3年がかりで職人の養成講座を行っており、そこで紙漉きを習得してきた方々がいるんです。個々で紙漉きの道具を揃えたり原料を確保するのは大変かもしれませんが、上手くいけばきっと将来も伝統的に繋がっていくのではないかと期待しています。

 

 鈴木英一さん

 住所:一関市東山町長坂 電話:0191-47-3454

 

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