(idea 2018年2月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

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地域におけるスポーツコミュニティのありかたを考える

対談者 車いすラグビー元日本代表監督 岩渕 典仁 さん

聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺 浩樹

 

 岩渕典仁さんは、2009年から2012年まで車いす(ウィルチェアー)ラグビー日本代表監督として選手の育成や指導にあたり、2012年にはロンドンパラリンピックにも参加。現在は監督を退き、実家がある室根に平成29年にUターンしてきました。そんな岩渕さんに、監督をしていた頃の経験や、一関・室根の地域づくりに関する思いをお聞きしました。

ボランティアから始まり国の代表監督へ

【小野寺】まずは岩渕さんの自己紹介をお願いします。

岩渕典仁さん 車いすラグビー 元日本代表監督

車いすラグビー元日本代表監督 

岩渕 典仁 さん

【岩渕】私は運動全般が好きで小学校から大学まで野球とラグビーをし、将来は中学・高校の保健体育の先生になろうと思い、大学では運動・スポーツの教育について学んでいました。そんな中、父が病気になり、「一般的な中高生に運動を教えることは学んできたけど、障がいを持っている人や父のように病気になった人への運動・スポーツ指導ってどうやるのかな」と。「体だけではなく、心理的な面も勉強したい」と思い、大学卒業後に、今度は、受験資格が大卒で運動・スポーツのほか医療福祉も勉強できる厚生労働省所管の学校に進学しました。

 

【小野寺】なるほど。岩渕さんが車いすラグビーと出会ったのはいつ頃ですか?

 

 【岩渕】出会いは厚生労働省所管の学校でした。車いすラグビーは1977年にカナダで発祥したスポーツで、2000年のシドニーパラリンピックから正式種目になったんですけど、私が在席していた学校は国の施設で、学校のほかに研究所や病院、リハビリ施設等が集まった多機能施設だったんです。そこで、車いすラグビーがパラリンピックに出場できるように、種目の普及や選手の育成をしていました。車いすラグビーはアメリカンフットボールに近く、タックルはラグビーと同じくらい迫力のある格闘技のスポーツで、一目見た時からすごくはまりました!学生の頃からボランティアとして選手達の練習をサポートし、卒業し就職してからも練習や大会に関わらせてもらい、2004年からはアシスタントコーチや審判として海外にも行くようになりました。そして2009年からの4年間は、私が代表監督をすることになったんです。国際大会の機会を増やしたり合宿所を安定して確保したり、障がいを持っている人のトレーニングやケアの仕方に配慮しながら、アスリートとしての意識改革や経験を積み重ね、選手のモチベーションを高めていきました。

 

【小野寺】世界における日本の車いすラグビーの実力というのは、どれくらいなんですか?

 

 【岩渕】日本が初めてパラリンピックの車いすラグビーの種目に参加できたのは2004年のアテネで、成績は8か国中8位、その次の2008年の北京では7位、2012年のロンドンでは4位、2016年のリオでは3位でした。成績は右肩上がりで、2020年の東京では金メダルを目指しています。

2012年 ロンドンパラリンピック 車いすラグビー 日本代表監督 岩渕典仁

2012年ロンドンパラリンピックの時の岩渕さん。

大会中は、常にプレッシャーを感じていたといいます。

知られていない一関市の選手や団体

【小野寺】一関市に選手はいるんですか?

 

【岩渕】車いすラグビーではないですが、千厩に「シッティングバレーボール」という座りながら行うバレーボールでパラリンピックに参加した佐々木政弘選手という方がいますよ。

一番の課題は情報を発信する場がないということかもしれませんね。岩手国体をきっかけに岩手県の障がい者のスポーツ団体ができて、各種目のチームもあるんですが、そういう情報が知りたい人に届いていないのではないでしょうか。

 

【小野寺】確かに、情報を知らないと何も始まらないですよね。チームや選手の情報を知っていれば「見に行ってみようかな」「体験してみようかな」と思うかもしれませんが、本当に誰かが伝えていかないと、広がっていきませんよね。

 

【岩渕】まずは情報を知ること、さらに言うとそれは当事者だけではなく当事者に関わる周囲の人たちも同じだと思います。価値観も広がるし、チャンスも増えるし。情報が届き、それを見てらもらえる状況ができれば、地域や社会が少しずつ変わっていくかもしれませんね。

岩渕典仁さん

地域を良くするために大切だと思うこと

【小野寺】今後やってみたいことはありますか?

 

【岩渕】今までの国や海外での経験を一つの物差しとしながら、岩手や一関、室根といった地域の中で、今どんな方々がどんな活動をしているのかなど、そういう状況をこれから見ていきたいと思っています。障がい者だけではなく子どもも高齢者も、我々のような社会人も、この地域に合ったスポーツの発展の仕方はどういうものかを考えたいです。

それに、まずは地域の人にどのように情報を知ってもらうかですね。情報が無ければ選択もできませんからね。地域が5年後、10年後に良く変わっていけるような仕組みをつくること、そこに問題意識を持つことが必要だと思っています。

 

【小野寺】地域でも色々とスポーツや運動はあって、その中でも個人種目はわりかし個人で高めることができますが、団体種目だとそもそもチームが形成できないという現状もありますよね。小学校の児童数が少なくて野球チーム1チームもつくれないとか、合同で練習してたりとか。

 

【岩渕】そうなんですよね。そこでどんな工夫をしたら良いかとか、どんな情報を探せば良いかとか。常にアンテナを高く持ちながら情報をキャッチして、それをどう地域に根付かせていくかを考えていかなければと思うんですけど、それを選択するのは地域ですよね。誰かにやらせられるのではなく自分達が主体的に行い、「こんな風にしたい」という形が見えてきたら、今度はそれをバックアップすれば良いと思います。

 

【小野寺】地域づくりもそのパターンですね。「こんな地域にしましょう!」と押し付けちゃうと無責任な地域づくりになってしまうので、どんな地域にしたいかを考えてもらい、主体性を持たせる方がのびのびと責任を持ってやっていけると思います。今は、これまでの行政主導型の地域づくりから地域主導型に変わるというちょっとした“転換期”を迎えています。いきなり地域の皆さんに「どうしたら良いか考えて意見ください」「アイディアを出してください」といっても正直戸惑いはあると思います。でもそこが今大事な悩みの時期でして、その苦しみを抜けると「やっぱり自分達で一歩踏み出そうかな」という自信に繋がるんじゃないかなと。やはり、時代の流れと共に地域コミュニティは変わらなきゃいけない部分と変わらずに残っていかなきゃいけない部分があると思います。

あと大事なのは“仕組みづくり”ですね。岩渕さんが話したように、誰がどのように関わり、どう進め、どう運営し、どう地域に根付かせていくかという仕組みが大切ですよね。

 

【岩渕】そうですね。私がやりたいと思っているのは、今までやってきた経験を通して自分は何ができるかを分析しながら、一関や室根のスタイルをつくるためのきっかけになるような情報発信だったり、自分の経験からの助言であったり。地域を良くするの「良く」は、“有名になる”とか“特別になる”とかだけではなく、地域のオリジナリティを深めるということだと思うんです。それは発展することだけではなく、小さくしたりコンパクトになることも逆に大事だったりしますよね。

自分達の選んだものであればきっと納得できると思うし、高齢者や障がいを持った方も含め、地域皆がイキイキと生きていくための仕組みがつくれれば、楽しい社会になっていくと思います。

 

 

※紙面で紹介できなかったお話は「こぼれ話」としてブログでご紹介しています。

 

 

 

┃岩渕典仁さんの連絡先

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  e-mail:iwabuchi_norihisa@yahoo.co.jp

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