(idea 2023年9月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

二言三言 143/115129

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本当の「自然の豊かさ」とは

~生物多様性の「質」を高めて【前編】~

佐藤 良平さん

佐藤 良平さん

 「一般社団法人久保川イーハトーブ自然再生研究所」主任研究員として久保川流域の生態系保全活動等に取り組む傍ら、岩手県が委嘱する「環境アドバイザー」としても活動中((公財)日本生態系協会による「こども環境管理士」2級資格保有)。「岩手日日新聞」で月2回連載する「里山スケッチ」は来年で10年目。昭和62年東京都生まれ、花泉町在住。

対談者 一般社団法人久保川イーハトーブ自然再生研究所

                  主任研究員 佐藤 良平さん【前編】  

 

聞き手 いちのせき市民活動センター  センター長 小野寺浩樹

 一関市萩荘の久保川流域(支流栃倉川含む)の羽根橋から上流側、立石地区までの里地里山を名付けた「久保川イーハトーブ世界※1」。平成12年頃から生物多様性の保全と再生が図られ、平成21年には、自然再生推進法に基づく「自然再生事業※2」の対象地域として「久保川イーハトーブ自然再生協議会」を設立。同会の活動には、我々市民が今まさに意識すべき視点が多々含まれています。

 

 

※1 平成27年、同名称で環境省より生物多様性保全上重要な里地里山に選定。

 

※2 事業実施者は「一般社団法人久保川イーハトーブ自然再生研究所」、その他役割を中央大学や環境分野のNPO、当該地域住民等が担う。

 

(2回シリーズの前編)

小野寺 「久保川イーハトーブ世界」は聞いたことがあっても、実態を知らない市民は多いです。どういうエリアでしょうか。

 

佐藤 現在の日本から失われつつある「里山の景観」と「生物多様性」が大変良質な状態で残っている場所です。10㎞に渡る流域規模で良質な里山の景観と生物多様性が維持されている場所というのは、おそらく日本にはここ以外にないと思います。

 

小野寺 日本唯一ですか!

 

佐藤 平成21年に環境省認可の「久保川イーハトーブ自然再生協議会」を設立し、自然再生の活動をしていますが、同様の団体からの視察や、海外からの研究者が来ます。世界からも「里山の自然を保全している団体・地域」として注目※3されています。

 

※3 日本ユネスコ協会連盟の第1回「プロジェクト未来遺産」にも登録され、同協会の未来遺産運動に協賛する企業が自然再生作業に参加している。

 

小野寺 平成12年頃から活動は始まっていたと聞きました。具体的にはどのような活動を?

 

佐藤 簡単に言えば自然再生事業を行っている市民団体ですが、自然再生推進法に基づく活動であり、専門家や地域住民、関係行政機関や企業など、多様な主体が参加しています。「自然再生事業実施計画」を作成し、その中の大きく3つの事業に取り組んでいます。

 

小野寺 全国に26しかない協議会の1つということですが、大きく3つの事業の中身とは?

 

佐藤 1つ目はため池を中心とした水辺環境における、ウシガエルなど「侵略的外来種※4」の防除です。2つ目は管理放棄された雑木林などの間伐や下草刈りです。3つ目は耕作放棄地となった水田やため池を利用したビオトープ※5作りです。これらの活動を通じて里山らしい景観と生物多様性の保全・再生を図るとともに、保全・再生された自然を活かした環境学習などを通じて、地域内外交流の活性化を目指しています。

 

 

※4 外来種の中で、地域の自然環境や人の生活に大きな影響を与え、生物多様性を脅かすおそれのあるもの。 

※5 本来その地域に棲む様々な生物が安定して生息できる空間のこと。特に水と植物が作る環境(水辺)を指すことが多い。ここでも人工の水辺を指す。

 

小野寺 「良質な生物多様性が残っている」という久保川でも、大々的な「自然再生」を行わなければいけないのですか?

 

佐藤 確かに「自然が豊か」には見えると思いますが、実は平成12年以降、自然環境の「劣化」が始まっています。「一関の魅力は何か」と聞かれると「自然が豊か」と答える人が多いですが、その「質」を知っている人は少ないでしょう。見た目には豊かそうに見えても、中身はかなり劣化しているんです。

 

小野寺 「自然の質」という視点、すごく共感します。学生などは特に、一関の魅力を「自然が豊か」と教科書の回答かのように一様に答えますが、「緑が多い=自然が豊か」という発想でしかないように感じられます。手入れがされていない、つる草だらけの荒れた山も増えているのに……。

 

佐藤 他の地域と比べれば、確かに自然が残っていて、だからこそ、早めに様々な取り組みをしなければいけないんです。生物多様性が維持されてきた久保川流域でも状況が悪くなってきていて、それでも希少な在来種や景観がかろうじて残っている=「まだ間に合う」から、今、「自然再生」をするのです。

 

小野寺 なるほど。久保川の「劣化」は何が原因ですか?

 

佐藤 「侵略的外来種」の進入や耕作放棄地の増加、全国的な気候変動など、要因は様々で、見た目には変化していなくても、生き物がどんどん減っています。久保川流域は内陸山間部に位置し、人の往来が困難な上、水源の乏しさや岩盤が非常に硬いせいで開拓の歴史が浅いんです。そのため、水源確保を目的に約600個のため池が作られ、土側溝を利用してあぜ焼きを行う水田が現在も営まれています。このような人の暮らしと自然環境が合わさって地域固有の生物多様性が築かれてきたのですが、平成22年を過ぎるとネオニコチノイド系農薬散布や圃場整備の波がやってきてしまって……。

 

小野寺 確かに同じ田んぼの中でも、この20年程の間に、農薬や肥料など、様々近代化はしてますね。ちなみに、「再生」と言った時に、理想とする年代・時期はあるのでしょうか?

 

佐藤 当地域が目指すのは昭和の頭から40年代くらいの里山の景観ですね。その時代は里山の自然が、人間の暮らしや営みにマッチしていたので、人間が意識せずとも、自然と共存し、里山の生き物も発展しました。

 

小野寺 人間の営みによって発展した生き物もいるんですね!

 

佐藤 田んぼにいるアマガエルなどの生き物は、田んぼの増加とともに増えたはずですし、クワガタやカミキリムシもそう。人間が薪炭を目的に雑木林で樹液の出る木を残してきたから発展したんだと思います。

 

小野寺 すごい!でも耕作放棄地も山の手入れも、危機感は持っていても高齢化で手がかけられないという現実もあり……。

 

佐藤 今は当事者や一部の団体任せになっていますが、持続性や先を考えると、大きな団体や企業、行政との連携の必要性があります。景観に加えて、今は「生物多様性」も意識されています。自然と言っても、山、森、川、池、田んぼ、畑、と、様々なタイプの環境がありますよね。そういった色々な自然の環境の中に、そこに見合った、その場所に順応した生き物が棲んでいる。その全体が生物多様性です。その中にもさらに生態系の多様性、種の多様性、遺伝子の多様性など、色々とありますが、その全体の質が「自然の質」だと私は考えています。

 

小野寺 見た目の豊かさはほんの一部分ということですね。

 

佐藤 さらに言うと、手入れをしていたいわゆる里山と、手つかずの自然との「連結」が一番大切です。一関の場合は栗駒山系など、原生的な自然もすごくよく残っている。でも人の生活圏と交わるところでは、自然がないがしろにされてしまうこともあって。個々の自然だけでなく、それぞれのつながりを断ち切らないことが重要です。

 

小野寺 つまり久保川流域だけの取り組みではなく、全市的、全県的な取り組みであるべきなんですね。自然の豊かさが一関の価値なのであれば、それが一関全体の価値の創造になる、と。

 

後編はこちら

 一般社団法人久保川イーハトーブ自然再生研究所

 久保川里山日記

 

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