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★仕事の流儀№2「葉たばこ」~前編~はコチラからどうぞ(^^)/
★仕事の流儀№2「葉たばこ」~後編①~はコチラからどうぞ(^^)/
(idea2021年4月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
かつては盛んだったはずが、今となっては希少になりつつある「お仕事」やその技術等を調査する「仕事の流儀」シリーズ。県全体で見ると最盛期の3割程度にまで従事者が減ってしまった「葉たばこ農家」。煙草の善悪とは関係なく、一つの「産業文化」の記録として「葉たばこ」に関するあれこれをご紹介!前編(2020年7月号)では当地域における葉たばこの歴史をご紹介しましたが、今月・来月号では葉たばこ農家さんの1年をご紹介します。
※記載内容はあくまでもセンター独自調査の結果です。
昭和40年には6千6百戸を超す葉たばこ農家がいたものの、現在ではわずか69戸しか残っていない当地域(岩手県全体で見ると約880戸で、戸数では全国最多)。
農家戸数の減少とともに、組合も広域にせざるを得ず、現在当地域には2組合のみ。このうち、大東町の葉たばこ農家14戸で組織する「野田葉たばこ生産組合」及び菅原五三男さんに密着し、葉たばこ栽培の現場を見学(時に体験)!
前号では組合員が協力して行う種まきから、各農家に配布された苗をポットへ移植する作業までをご紹介しました。
野田葉たばこ生産組合の作業スケジュール
特にも密着させていただいた農家さん
菅原五三男さん
昭和28年大東町興田生まれ。海員高等学校卒業後は貨物船の船乗りとなりますが、26歳で結婚し、大原に婿に入ったことで専業農家へ。
葉たばこの葉は、大きいもので長さ約70㎝、幅が約30㎝もの大きさになります。
1本の茎に20枚~25枚の葉がつきますが、茎につく位置によって大きく4つ(左図参照)に分けられます(5~6つに分けられた時代も)。これは、上の方の葉(上葉や本葉の上位)にはニコチンが多く含まれるなど、位置によって成分含有量が異なるためで、時代によって需要(≒買取値)が変遷しているのだとか。
乾燥させた葉は、4つの着位毎に出荷され、リーフグレーダー(鑑定員)が格付け。1㎏あたり1,800円~2,000円程で売買されます。
※ちなみに2020年の菅原家では、10aあたり175㎏と例年より少ない収量でした。
□■「心止め」作業■□
あくまでも葉が主役の葉たばこは、葉に充分な栄養を行き渡らせるため、花は咲くと同時に切り落とす。
この作業は「心止め」と呼ばれ、葉の収穫作業と同時進行で行われる。
※満開になる前に見つけると切り取られる。
□■病害虫被害■□
生産地に適した(強い)種類が生産される葉たばこですが、それでも病害虫の被害が発生。特に多いのが害虫や、天候不順による被害。
葉が赤くなってしまったり、虫喰い状態になってしまったり……。
〈先月号からのつづき〉
密着!葉たばこ栽培
~定植▶出荷~
種まきから約1か月後の5月初旬、苗箱からポットに移植し、ハウスで成長させていた苗を畑へ定植(右写真)。菅原さん宅では夫婦で息を合わせ、約2日かけて1万100本もの苗を定植します(10aにつき2,525本の契約栽培)。
定植から約1か月半後、葉たばこは約1mの 高さに成長!いよいよ収穫が始まります。 手作業で1枚1枚茎から葉を切り取っていきます。下の葉から収穫していくので、しゃがんでの作業が続きます。
収穫した葉はすぐに「縄挟み(通称)」と呼ば れる作業へ。菅原家では奥さまが収穫し、収穫した葉の運搬と縄挟み作業を五三男さんが担当します。
「縄挟み」では、縄を交差させ、その間に葉の茎を1本ずつ挟み込みます。近年はこの作業も機械化されていたり、乾燥させる環境に応じて、やり方は異なるのだとか。ちなみに、葉に含まれるアブラにより、作業をしている手はあっという間に黒く、ベトベトに(当センター密着スタッフ談)!
「縄挟み」が終了した葉は順次乾燥に回します。時期にもよりますが、ハウス内(上写真)のほか、夏場は外で自然乾燥させることも(下写真)。
約1か月後には茶色くシワシワした状態に
2か月経過するとさらに乾燥が進み、ガサガサとした状態になります。
ちなみにこの乾燥作業も、機械管理できる乾燥施設が普及。室温35℃、湿度75%~85%で管理します。
乾燥が済むと「葉抜き(縄外し)」作業。
1枚1枚手作業で縄から外す生産者さん
機械化している生産者さん
外した葉は、選別と「葉拭き(カビ取り)」を行います。
次は通称「底なしボックス」と呼ばれる専用の箱へ
この箱の中でさらに水分を抜き、カビの発生を抑制します。葉たばこの味と香りを決める重要な工程がこの乾燥作業(熟成期間)なのだとか
11月中旬、水分がしっかり抜けた葉は、圧縮梱包機へ
この機械(写真左)は圧縮と同時に梱包が可能
梱包が完了した葉たばこは、12月中旬にJTの専用トラックで回収、青森・秋田・岩手の葉たばこが集まる「盛岡JTリーフセンター」へと運ばれ、リーフグレーダー(鑑定員)が格付け。生産者の役目は終了です。
機械化も進む葉たばこ栽培ですが、それでも同組合の3分の2の農家さんでは後継者がいないのだとか……。地域の「産業文化」として、これまでに培われてきた技術と経験は後世にも伝えていきたいものです。
↓実際の誌面ではこのように掲載されております