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二言三言 144/114476

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‘助けて’と言える仕組みづくり~フードバンクがつなぐ第一歩~

一関市社会福祉協議会 地域福祉課 石田郁絵さん

一関市社会福祉協議会 地域福祉課 石田郁絵さん

 衣川(現奥州市)出身、一関一高卒。大学卒業後、東京都稲城市役所に就職。生活保護世帯や民生児童委員等に関する部署を担当するも、東日本大震災を機に地元への想いが強くなり、岩手県にUターン。前職在職中に社会福祉士の資格を取得していたことから平成27年度より一関市社会福祉協議会へ就職、地域福祉課に配属となり現在に至る。一関市在住。

対談者 一関市社会福祉協議会 地域福祉課 石田郁絵さん

    

聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹

 1960年代後半にアメリカで始まったとされる「フードバンク(※1)」。現在では世界中の様々な国で行われ、日本においては2000年以降にフードバンクに関する団体が設立され始めました。フードバンクの背景にあるのは「食品ロス」問題、そして「貧困」に関する問題です。本年8月25日より当市域内でも取り組みがスタートした「フードバンク」と、そこから見えてくる課題を考えてみます。

 

※1 一般的には、様々な理由で流通に出すことができない食品を企業などから寄贈してもらい、必要としている施設や団体、困窮世帯に無償で提供する活動を指す。企業だけでなく、地域住民・家庭からも寄贈を呼びかける活動は「フードドライブ」とも呼ばれる。

小野寺 ついに一関市社会福祉協議会(以下、社協)によるフードバンクがスタートしましたが、改めて概要を教えてください。

 

石田 フードバンクは企業や団体、個人の方から善意で食品をご提供いただき、それを生活にお困りの方々に無償で提供する活動です。当社協では、生活に困っている人(※2)の生活基盤を整え、自立に向けた意欲向上を図ることを大きな目的としています。

 

※2 社協が実施する「生活困窮者自立支援事業」の利用申し込みを行った人が対象。

 

小野寺 世界的には食品ロスを防ぐという観点から生まれた活動ですが、社協としては貧困の観点の方が大きいですよね。

 

石田 はい。一般的には破損品や印字ミス商品、店頭での販売が難しくなって企業側が回収した賞味期限の近い食品がフードバンクに回されたりしますが、当市域においては、食糧を求めての相談が毎日あるわけではない(多い時で週に2~3件)ため、さらなる食品ロスを生まないためにも、賞味期限が3か月以上ある食品のみを対象としました。

 

小野寺 そうすると生鮮食品や冷蔵品は対象外ですね。

 

石田 常温保存のものに限定しています。相談に来る人の中には電気・ガス・水道などが止まっていたり、近々止まるという人が少なくありません。なので調理の必要がない缶詰やレトルト食品などに需要があります。

 

小野寺 これまでもそうした相談はあったと思いますが、どのように食品を調達し、提供していたんですか?

 

石田 盛岡を拠点とするフードバンク岩手という団体や、コープ東北が設置するコープフードバンクなどと連携し、食品を調達していたのですが、発送や市外の集配所まで取りにいく仕組みだったため、早くても翌日以降にしか提供することができず、タイムラグが発生していたんです。自分たちで収集と備蓄(※3)ができるようになったことで、即日提供できるようになりました。

 

※3 収集の窓口は一関市総合福祉センターのみ(フードポストを設置)。集まった食品の管理・備蓄はNPO法人レスパイトハウス・ハンズに委託。

 

小野寺 必要な人に必要なものを、タイムリーに提供できる仕組みができたということですね。

 

石田 実は「食べ物を寄付したい」という声をいただくことも少なからずあり、そうした善意の声にも気軽に対応できるようになったという側面もあります。

 

小野寺 これは盲点だな、と思うような食品はありますか。

 

石田 ひとり親家庭など、子どもがいる人もいるので、お菓子やジュース類も需要はあります。お金がなく、お米だけを食べている人や、一日一食だけで生活している人もいますが、どうしても精神的に参ってきてしまうので、気持ちが前向きになれるような食品も状況を見てお渡ししています。また、現状は栄養価まで考慮できていないので、野菜ジュースなどもバランスをとる際に助かります。

 

小野寺 提供される食品が増え、備蓄品のバリエーションが増えると栄養価まで踏み込めますよね。調味料などはどうですか?

 

石田 対象ではあるのですが、現実的には自炊が難しい人が多いので、需要は少ないです。あとはお米だけはある、という人も意外と多いので、お米は1年以内の玄米で最大14袋までの備蓄に留めることにしています。

 

小野寺 フードバンクの準備を進める最中にコロナ問題が発生しましたが、何か影響は?

 

石田 全国的に生活困窮者が増え、フードバンクの取組も注目されるようになりました。そのため、中央共募(※4)がフードバンク事業に関連する補助事業を展開したんです。そこに採択され、お米用の保冷庫等を購入することができ、対象食品の数を増やすことができました。また、フードバンクに関する情報照会も多数寄せられていました。

 

※4 社会福祉法人中央共同募金会。「赤い羽根 子どもと家族の緊急支援 全国キャンペーン」として緊急募金と活動支援を展開した。

 

小野寺 フードバンクの必要性が認識されたということでしょうが、当市域でもコロナ禍において生活困窮に関する相談は増えたのでしょうか。

 

 

石田 3月末頃から増えました。「コロナのせいで」という切り口ですが、よくよく話を聞くとコロナ禍以前から困窮状態だった人も多く、コロナ問題をきっかけに相談しやすくなったのかもしれません。

 

 

小野寺 コロナ問題のせいにしないと助けてと言えない状況だったわけですね。助けてと言うことが恥ずかしいという感覚がなくならないと、せっかく支援の仕組みができても機能しないですよね。

 

石田 困っている状況を恥ずかしいと思ってしまいがちですが、今は大丈夫でも病気や事故にあったら誰だって生活に困るわけなので、必ずしも自分のせいではないんですよね。

 

小野寺 実際、相談に来るのはどういう人が多いですか。

 

石田 以前は50代以上が多かったですが、今は20~30代の相談も増えてきていて、親戚等には頼れないという人も多いです。中高年層に意外と多いのは、普段からギリギリの生活費で暮らしていて、葬儀等の急な出費で食糧を買うお金がなくなってしまった、というパターンとか。

 

小野寺 今は親戚や身内を頼ることが恥、という感覚も強くなっているように感じます。身内に自分の恥をさらすより、赤の他人にさらした方が良い、というような。困った時には本家に頼るという構図はなくなってきてますよね。

 

石田 食糧提供をする前には、頼れる人が本当にいないのか聞き取り(※5)は行います。社協の支援によって親戚等の関係性を切ってしまうようでは意味がないですからね。

 

※5 その他、所持金と食料が少ないこと、今後の支出及び収入見込み、当面の生活状況及び世帯員数等を確認の上、必要と判断した場合に支援する。

 

小野寺 困っている人に気づいていても、助けてと言われないから手を差し出せないと悩んでいる区長や自治会長も多いです。「助けてと言って良いんだよ」という状況を公につくってあげることも必要で、フードバンクもその一つなんでしょうね。

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