(idea 2020年4月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

二言三言 142/115129

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経験は買ってでも

~古典日本舞踊に見る地域の土台~

水木流東京水木会 師範 水木鶴升さん 千葉健吾さん

水木流 東京水木会 師範 水木鶴升(千葉健吾)さん

 昭和50年、花泉町永井生まれ(在住)。小学5年生の10月より水木流(日本舞踊の流派)を習い始め、高校1年生で水木流東京水木会の名取に、大学3年生で師範となる。平成13年4月に水木流鶴升会を発足。発足当時から福祉施設への「をどりボランティア」を続け、令和元年9月には福祉施設へのボランティア活動が500回を達成。書道、華道でも同じく鶴升の芸名を持つ。

対談者 水木流 東京水木会 師範 水木鶴升(千葉健吾)さん

    

聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹

「踊り」の愛好家たちが数多く参加したとあるワークショップ(参加型会議)にて一際異彩を放っていた着物の男性。女性ばかりのイメージがある日本舞踊の世界において、若くして日本舞踊・水木流の師範(東京水木会)となった水木鶴升こと千葉健吾さんです。地元の舞台のほか、東京の国立劇場や日本橋劇場で踊った経験もあるという健吾さんに、そのモチベーションとなるものをお伺いしました。

小野寺 小学5年生で始め、高校1年生で名取ということで、わずか4年である程度の技術を習得したということですよね。

 

鶴升 大学3年の時に師範もとったのですが、その当時にしてみれば異例のスピードだったようです。肌に合ったことと、続けられる環境にあったおかげでしょうね。

 

小野寺 肌に合ったというのがすごい。代々やっていたとか?

 

鶴升 家系から見ても誰もやっていないので突然変異です(笑)

昔はどこの集落にも「おまつり」があって、その出し物にどの家庭からも必ず一人は出るようにと言われてたんです。ただ、私の家は商売をしていて親が出られないので、私が行かされていて。そこで踊りを教えていたのが小松団子屋のおばあちゃんだったんですが、私の覚えが早かったらしく「ちゃんと習わせたら?」となって。

 

小野寺 それが水木流だった?

 

鶴升 そう、先生(水木歌升)が毎月埼玉の狭山市から出張稽古をしてくださっていて。当時は今より日本舞踊は盛んで、町内にも様々な流派がある中で、古典の水木流と出会えたのは小松団子屋のおばあちゃんがたまたま水木流を習っていたからという偶然です。

 

小野寺 実は勝手な妄想をしていて。永井は街道筋なので、その昔街道が栄えていた時代に、酒屋さんがあって、芸子さんがいて、その流れで日本舞踊があったんじゃないかと(笑)

 

鶴升 いえいえ(笑)もっと単純に「おまつり」とか結婚式とか、いろんな場面での余興として必要だったんだと思います。だから昔は男の人もけっこう踊ってたんですよ。股旅舞踊とか。

 

小野寺 確かに、神社の秋まつりとか、青年部で出し物をしたりしますね。でもそれを個人として続けられている魅力というのは、どういうところに?

 

鶴升 そこが「古典」だったのかな。水木流は古典の日本舞踊なので、1曲20分や30分の演目もあって。そうすると1か月2か月じゃ覚えられないので。それと、古典の音色に魅力を感じます。義太夫節と言って、太棹の三味線で語りも交えての演奏に合わせて踊ったり、長唄などの三味線や鼓、笛とか……。

 

小野寺 古典の日本舞踊というのは正直知らない世界でした。鏡獅子など歌舞伎のようですね。

 

鶴升 発表会となるとこういう演目(下記写真参照)になります。大学1年生の名取披露の時に踊ったのがこの鏡獅子。

 

小野寺 古典を踊る流派は他にも一関にあるんですか。

 

鶴升 一関にもいくつかあります。ただ、古典を踊る流派以外の舞踊の団体の中で独立し、自分で流派や会を自由につくってやっている人たちが多くなっている気はします。踊りにおいてはありえないでしょ?という振りで踊る会もあり……。

 

小野寺 好きにやるのと自由にやることは違いますよね。ある程度の型があってアレンジするのは良いとして、型をやぶって自由にやるというのは意味合いが違う。コミュニティの生活も同じく、変えて良い部分と曲げてはいけない部分があって。

 

鶴升 本当は私も水木流としては、古典だけを踊らなくてはいけないのですが、老人ホームなどでのボランティアでは懐メロや歌謡曲も使うんです。見ている人もその方が喜んでくれるし、それがきっかけでお稽古をしたいという人もいます。歌謡曲などを使っても型は守った振り付けをしています。

 

小野寺 そもそも水木流はどうして一関に?

 

鶴升 かつての理事長先生(水木歌澄)が盛岡出身だった縁で、カスリン台風など水害で子どもたちに娯楽がないのを危惧して一関でお稽古を始められたんです。そこで習った水木歌楓先生(旅苑松本)が師範となって広められました。

 

小野寺 子どもたちへの娯楽なんですね。とは言え、それなりに月謝もかかりますよね。

 

鶴升 普通の人たちと名取、師範とでは月謝も違いますし、師範の私も師匠の先生にはお月謝を払います。その他にも発表会となればかつらや衣装、出演料などいろいろお金はかかります。いくらもらうの?とよく言われますが、もらうどころか出すんです(笑)

 

小野寺 お金を払ってまで踊りたいという、そこにプライドというか魂の込め方が違いますよね。「いくらでやってやる」というのと、「お金払うからやらせてください」というのは関係性が全然違う。例えば先日、ある会議で「我々はお金(会費)を払って議論しているんだから」という発言がありました。今の時代、損得勘定でしか見ない人が増えているけど、お金を払ってでも参加することの価値観が変わってしまってますよね。

 

鶴升 物はあればなくなりますが、自分が修得したもの、経験したものは誰にも持っていかれないじゃないですか。それが自分のためになるわけで。

 

小野寺 古典の日本舞踊という格式があるものとして、踊る側はプライドを持って続けていくし、呼ぶ側もそうした品格のある余興として、地域の文化にはこれからも残っていくのでしょうね。まだまだ我々には知らない世界がたくさんあり、でもそれも含めて地域という土台があるということを改めて考えさせられました。

水木鶴升 水木流東京水木会 鏡獅子

名取披露の際に鶴升さんが踊った「鏡獅子」。日本舞踊は約400年の歴史があり、能や歌舞伎を母体とした「舞台上で上演する事を目的とした一個の舞台芸術」なのだとか。

 ※公益社団法人日本舞踊協会ホームページより

 

水木鶴升(みずきかくしょう)

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