(idea 2023年6月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

二言三言 143/115129

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林業も「結い」に立ち返って

~里山の「青写真」を描き直すために~

山芳林業 代表 芳賀修一さん

「山芳(やまは)林業」代表  芳賀修一さん

芳賀 修一

 「山芳(やまは)林業」代表。岩手県南地域の里山・森林整備及び危険木の伐採を主として、個人宅も含めた依頼に応じている。

 豊富な経験と知識を活かし、東磐職業訓練協会の「改正版チェーンソーによる伐木等の業務(特別教育)」の講師も務める。

 昭和24年、一関市大東町大原生まれ(在住)。

対談者 山芳(やまは)林業 代表 芳賀 修一さん   

 

聞き手 いちのせき市民活動センター  センター長 小野寺浩樹

 一関市の森林面積は、市の総面積の約63%を占め、そのうちの約88%が民有林で、岩手県の割合よりも20%※1以上高い値です(令和2年度現在)。令和3年9月、「地元の森林を活かす一関市林業振興条例」が制定され、市産木材の積極的な活用の推進や、伐採後の確実な造林による次世代に循環する仕組みなどが理念として掲げられました。民有林整備が重要視される当市において、その実情とは? 

 

※1 一関市(2022)『林業振興の推進に関する基本指針』

小野寺 ここ数年で「自伐型林業」という言葉をよく耳にするようになり、市でも森林整備の担い手確保として、「自伐型林業者の育成」を取組の基本的事項に盛り込んでいます。ずばり、自伐型林業とはどういう林業を指すのでしょうか?

 

芳賀 大きな分類としては大規模に機械等を使って林業を行う企業に対して、個人やグループで山を管理するような意味合いです。

 

小野寺 市の指針にも「自家労働作業により収益を得ながら、地域の森林を地域住民が副業などによって手入れを進める自伐型林業者の育成」と書いてあるんですが、具体的なイメージが持てずにいます。

 

芳賀 農作業でいう「結い」みたいなものです。山の所有者同士でチームを組むんです。お互いに「手持ちでやるべ」となれば、「今月は○○家の分な」って、お互いに賃金を発生させずに手入れできるわけです。高齢でとてももう山には行けないという人がいれば、その家からは維持管理費をいただけば良いんです。

 

小野寺 「おらいの家はおらいで」ではなく、近隣同士で管理するということですか?

 

芳賀 そう。例えば山の中で所有者が分かれていると、奥の方の人は「出し賃※2」が手前の人よりもかかってしまう。それをみんなで管理するという考え方。

 

※2 伐採した木を森林から搬出する際の費用。作業道や林道がない山が多いため、間伐した木を森林内に残してしまうケースが多く(切捨間伐)、その場合は中間収益に結びつかない。搬出するために作業道を設置するためには、その長さに応じた費用がかかる。

 

小野寺 なるほど。確かに我が家の山も、山の中で他者の土地と隣接していた気がします。

 

芳賀 それに、最近では「面積が小さいし売らなくても良い」という人もいます。そういう人の山林を管理する確約を取り、巻き込んでいくことが大事。そうやって管理する体制を作らないと、その代が絶えて消えてしまったら、山が荒れるだけですから。

 

小野寺 伐り出す作業まで、自分たちでやるんですか?

 

芳賀 間伐や販売の時には、我々のような林業事業者に相談すれば良いんです。伐ってお金にする方法は様々あります。それに、知識経験がある人が伐らないと怪我をするだけですから。

 

小野寺 そうすると「山の自主管理グループ」のような感じですよね。「自伐」といっても、伐る前段階を自分たちでやるというイメージでしょうか。

 

芳賀 そう、「売り方」をどうしようかと考えるのは次の段階。まずは手入れをして、木や山を育てる。山は針葉樹だけじゃないんだもの。広葉樹と針葉樹では売り先が違うし、伐り方やタイミングも違う。

 

小野寺 実は僕も山を持っているんですが、父が生前に「山の相続はしたけど、その山に行ったことはない」と言っていて、そのまま一度も自分の山に入ることなく逝ってしまったんです。だから僕も相続はしたけど行けていないし、手入れの仕方もわからない。そういう人って少なくないと思うんですが、まずはどうしたら良いんでしょうか?

 

芳賀 まずは固定資産税の切符を持って林政推進課に行く※3と良いです。そこで「森林現況表」や「森林簿」などを入手できれば、どんな木を何年前に植えたか(≒林齢)がわかるので、今が「伐り時」なのかどうかを確認することができます。

 

※3 森林の所有者と一致している場合は本人確認書類(免許書等)と固定資産税の切符のみで可。未相続状態である場合などは、その他の書類も必要。

 

小野寺 山の素人には「伐り時」が分かりませんが、何が目安なんでしょうか?

 

芳賀 この辺の人工林は今50~60林齢になっているところが多く、手入れがされていれば70林齢くらいまでは木が育つ可能性があっても、そのまま手入れをし続けなければ、やがてはダメになるだけです。であれば、今は国や県の補助事業が様々あるので、間伐して育てていくか、皆伐して次の青写真を描くか…。本来は森林組合がそうしたアドバイスを山の所有者にすべきなのですが、森林組合も人材不足や松くい虫被害の対応等で手が回っていないのが実情。なので私は、補助事業の情報などを持って適正時期の山を見つけたら、所有者に話をするようにしています。

 

小野寺 結局「自伐型林業」と言っても、チェーンソーで伐倒する技術だけあってもダメで、そうした知識や経験が必要なんですよね。

 

芳賀 なのでチームを組む時に、そういう知識を持った人を入れるべきなんです。一度しっかり手入れをすれば、しばらくは軽微な手入れで済むわけですから、その間に、知識を持った人には別のチームに入ってもらい、指導してもらうなど、地域の中で複数のチームがつながっていけば良いんです。

 

小野寺 例えば先ほど「青写真を描く」とありましたが、皆伐して、杉ではない樹種を植林しても良いわけですよね?例えば「メープルシロップが採れる山にする」という目標に向かって、カエデを植える、とか(笑)

 

芳賀 もちろん。昔は、家の建て替えなどのために杉を植えましたが、今はもう、自分の家の木で家を建てる人はいなくなってしまった。なので、当時の目的とは異なる青写真を描き直さなければいけないんです。それが「マウンテンバイクで遊べる山」でも良いわけです。

 

小野寺 なるほど!各家が「どういう山にしていきたいか」を考え直す時期なんですね。

 

芳賀 そして当時は、木を出す時のことまで考えずにとにかく植えているので、林道がないんんです。そのために、切り捨て間伐※4ばかりが行われてきましたが、今は間伐材で少しでも収益を得ましょうと、林道整備の補助もあります。

 

※4 「※2」参照  

 

小野寺 「自伐型林業」という言葉に惑わされず、補助事業などを活用しながら、「結い」で多面的な機能※5を持つ地域の里山を、有効に活用していきましょう、ということですね。

 

※5 経済活動である林業による木材生産、水資源の確保、山地災害の防止、快適な環境の掲載、保健・レクリエーション、文化の維持及び継承、生物多様性の保全、二酸化炭素吸収による地球温暖化の防止 等(『林業振興の推進に関する基本指針(※1)』より)

 

芳賀 そして「見られて恥ずかしくない山」にして欲しいです。

 

山芳林業 

所 一関市大東町大原字畑中19-2

電話 0191-72-3750

 

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