浅田次郎著『終わらざる夏』(上・下)(集英社刊)

今年も終戦の月、8月が巡ってきました。

第2次世界大戦の終戦「1945(昭和20)年8月15日」から今年は70年の節目の年です。

この時期、テレビ等で戦争(第2次世界大戦、太平洋戦争、大東亜戦争、日中戦争)について取り上げられます。そんな訳で今回は、戦争に関わる内容としました。


昭和20年8月15日正午、玉音放送により戦争は終わりを告げました。しかし、戦いがその後も続いた場所がいくつかありました。その中でも最大規模だったのが千島列島最北端での「占守島の戦い」です。

著者はこの戦いの史実をもとに、戦争に関わった人とその家族の生活を通して戦争の悲惨さと愚かさを描いています。


物語は終戦末期の大本営本部。ポツダム宣言受諾や本土決戦をも想定し、兵士をどう補充するか、その動員計画づくりに苦悩するところから物語は始まります。


1945(昭和20)年の終戦をはさむ動きは次のようになっています。

2月 4日 米英ソ首脳、ヤルタで会談

…ソ連の対日宣戦と南樺太、千島列島の領有を米英が承認。

 7月26日 ドイツのポツダムで英米ソ首脳会談

…ポツダム宣言発表、日本これを黙殺。

 8月 6日 米軍、広島に史上初の原子爆弾投下。

 8月 8日 日ソ中立条約を破棄し、ソ連対日宣戦布告、満州国と朝鮮半島に侵攻。

 8月 9日 米軍、長崎に原爆投下。御前会議でポツダム宣言の受諾を決定。

 8月10日 日本、連合国にポツダム宣言受諾を打電により通告。

 8月14日 敗戦の詔が出される。中立国にポツダム宣言受諾を通告。

 8月15日 日本国民へ玉音放送(終戦の詔)。南方軍これに抗議し戦闘続行。

 8月16日 ソ連軍、南樺太に侵攻開始(28日占領)。大本営、停戦命令を出す。

 8月18日 ソ連軍、千島列島の占守島に侵攻。

 8月21日 占守島の日ソ両軍、停戦する。

 8月30日 連合軍最高司令官マッカーサー、厚木飛行場に到着。

 9月 2日 降伏文書調印、太平洋戦争(大東亜戦争)終結。


8月15日の玉音放送まであと1ヵ月。兵士補充のための動員計画に基づき、岩手県出身の3人に臨時招集の赤紙が届きます。


一人は片岡直哉。

滝沢村生まれで、盛岡中学(現盛岡一高)では卒業生総代を務めた秀才。東京外国語学校を卒業し、東京の出版社で英語の翻訳を手がけ親子3人で幸せに暮らしている。招集年限の45歳まであと1ヵ月というところでの応召でした。


二人目は菊池忠彦。

盛岡中学から岩手医専(現岩手医大)を卒業後、東京帝大に進学していた郷土の星、と呼ばれるべき優等生。ふるさとの人たちの病気を治し、無医村も多い郷里の医療に貢献したいと願っている矢先での応召でした。


三人目は富永熊男。

鬼熊の異名をとり金鵄勲章に輝くほどの歴戦の勇士は岩手県では知らない人はいないという存在。右手指3本を欠落し盛岡の加賀野で名誉の予備役中。母ひとり子ひとりの家で育ち、老いた母のために孝行したいと願っているところでの応召でした。


3人はいわば来るはずのない赤紙をもらったわけですが、3人に共通しているのはそれぞれに特殊な技能を有していることでした。片岡は英語堪能であり、菊池は医師、富永は自動車の運転と整備に精通していたからです。

物語は、岩手県にゆかりのあるこの3人を軸にして展開していきます。


この作品の舞台となる占守(シュムシュ)島は、約1200kmの総延長をもつ千島列島の最北端にある島です。カムチャッカ半島最南端のロパトカ岬までわずか12kmの位置にあり、国防の要衝となっています。占守島は、現地の人々が、「シーモシリ」(美しき島)と呼んでいた島でした。


占守島は、アリューシャン列島を基地とする米軍の攻撃に備えて、昭和19年2月に満州から移駐してきた関東軍戦車第11連隊(50両)を含む第91師団、約2万人の精兵が守っていました。

侵攻してくる米軍相手にいかに終戦交渉を進めるか、その際、英語通訳の必要性が高まり、そこで片岡の招集が図られたのでした。菊池や富永の招集はいわばそれをカモフラージュするために成されたのでした。


8月15日の玉音放送を聞いて終戦と知った現地軍は、武装解除に向けて米軍が上陸してくるものと思っていた矢先、カムチャッカ半島のロパトカ岬から突如砲撃を受けます。ソ連軍の侵攻が始まったのです。

終戦と知りながら執拗に挑発するソ連軍。反撃せざるを得なくなった日本軍。日ソ不可侵条約を一方的に破棄してのどさくさ紛れの参戦だったソ連軍の野望。

 3日間の戦いはソ連側の損失が大きかったのですが日本は降伏します。そして、その後は日本兵たちのシベリア抑留へと続きます。


「終わらざる夏」は、上・下巻合わせて約900ページの大作。

3人の家族、片岡の子供と疎開先の先生、少年兵、赤紙を届ける役場職員、占守島の缶詰工場で働く女学生、ソ連の兵、先住民など、いろんな人物にスポットを当てて物語が進められます。著者の描く人物描写は温かく、それゆえに戦いの悲しみが伝わります。


第2次世界大戦では300万人以上の日本人が亡くなりました。そのうち何の罪もない一般市民の死者は200万人を超えると言われます。終戦前年にはアメリカに制空権も奪われ、勝ち目がなくなってきた戦いを無為に延ばしてしまった時のリーダー達。

戦争は2度とあってはならないと誓う8月です。


この本、市立図書館全館で配架されています。文庫版は上・中・下巻から成っています。


ちなみに、ソ連軍が北海道に上陸した場合、日本海側の留萌市と太平洋側の釧路市を結んだ線から北側をソ連が占領する予定でした。北海道は分断され、朝鮮半島と同じ悲劇が起こる可能性もあったわけです。

また、終戦前後の動きを描いた映画「日本のいちばん長い日」が40数年ぶり、新作として8月8日から全国ロードショーが始まります。


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