「でんでら国」 平谷美樹著(小学館)

岩手県…南部藩を舞台とした物語を紹介します。


八戸藩と南部藩に挟まれた二万石の小国・外館(とだて)藩の大平村。

60歳になった善兵衛。家族に別れを告げて山に向かう場面から物語は始まります。

さて、似た話があったなと思う人は年配の方かと思います。

そう、年配の私は「楢山節考(深沢七郎著)」を思い出しました。各地の姨捨(うばすて)伝説を取材して、老人は70歳になると捨てられるという習慣のある信州の村を舞台として書かれた物語です。


 「でんでら国」は確かに姥捨て話ではありますが、「楢山節考」の暗に対して妙に明るいところが本作品の妙かと。

実は、山中奥深く入った老人たちが共同で暮す秘密の村があり、老人たちはこれまで通り農作業を行い、年貢がないことから開放的に暮らしている、というのが「でんでら国」という表題の由縁となっています。

※遠野市にはデンデラ野が実在していました。


しかし、老人たちはいつまでも楽しく暮らしてはいられなくなりました。藩に「でんでら国」の存在を疑われ始めます。

それはなぜか? 飢饉の年であっても他の村々が苦労しているのを横目に、大平村だけはきちんと年貢を納めていたからです。不足分の年貢米は老人たちが融通してやるという大平村の連携プレーがありました。

棄老により食い扶持を減らしているとはいえ、怪しいと目を光らせたのが田代代官。その代官から大平村の隠田を調べるよう命じられたのが、別段廻り役の舟越平太郎。「でんでら国」を守ろうとする村人側と、隠田を暴こうとする役人側との知恵比べ、作戦比べが読み手をハラハラドキドキさせます。

お上と農民とのせめぎ合い。どうしても農民側に肩入れしたくなるところですが、平太郎も人の子。彼の揺れる心情もストーリに紡がれています。

「でんでら国」の老人たちは明るく元気いっぱい。年をとっても生き生きと暮らしていける場所があるとしたら、まさにそこは桃源郷なのだと思いました。


ところで、著者の平谷美樹さん。

女性と思いましたが、「ひらやよしき」と読む男性でした。しかも、岩手県在住で、1960年生まれの55歳。以前は、県内の公立中学校で美術の先生をしていたそうです。


 この本、花泉図書館以外の市立図書館に配架されています。

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コメント: 2
  • #1

    平谷美樹 (木曜日, 21 5月 2015 21:05)

    拙著の紹介、ありがとうございます。
    わたしの名前は「ひらや・よしき」と読みます。体を壊したので現在は教職を辞し、専業で作家をしています。

  • #2

    狩野 (火曜日, 26 5月 2015 12:52)

    こんにちは。
    平谷さん貴重なコメントありがとうございます。名前を間違えて載せてしまい申しわけありませんでした。

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