(idea 2021年7月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

二言三言 143/115129

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子どものSOSを取りこぼさないために

~児童虐待を未然に防ぐ仕組み【前編】~

一関児童相談所所長 山岸 公子さん

岩手県一関児童相談所 所長 山岸公美さん

 岩手県一関児童相談所所長。同児童相談所には令和3年4月現在、職員25人、会計年度任用職員10人、嘱託医(業務委託含む)2人が配置されており、18歳未満の児童に関する養護相談(児童虐待含む)、保健相談、障がい相談、非行相談、育成相談に対応している。

対談者 岩手県一関児童相談所 所長 山岸公美さん 

    

聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹

 令和元年、「児童虐待防止法」が改正され、親権者等による体罰の禁止が明記されました。しかし、新型コロナウイルス感染症対策に伴う休校や外出自粛による要保護児童の見守り機会の減少や、家庭内でのストレス増加により、虐待リスクの高まりが懸念されています。児童虐待を未然に防ぐために、一個人として、家庭として、地域として、それぞれにできることを考えます。

小野寺 コロナ禍で生活困窮世帯が増えているという現実は一関でも出てきていますが、児童相談所(以下、児相)では何か影響を感じていますか。

 

山岸 直接的にコロナ禍の影響が数字で出ているわけではないですが、コロナ禍で家庭生活が長くなったことや、収入減などが少なからず関連しているのかなという事案はあります。

 

小野寺 「まだ表面化していない」という感じでしょうか?

 

山岸 令和2年度の児童虐待に関する通告※1は、令和元年度に比べると、学校からは減って、警察からは増えています。部活の自粛などがなければ、学校からの通告も例年ベースもしくは例年以上だったかもしれないという推測はできます。

 

※1 「虐待を発見した者は児童相談所などに通告する義務がある(児福法第二十五条)」とされており、特に平成25年12月から警察がDV事案への積極的な介入及び体制を確立したことに伴い、警察から児童相談所への通告が増加した。

 

小野寺 なるほど。警察からの通告にはどのような事案が多いのでしょうか。

 

山岸 夫婦喧嘩やDVなど、大人の争いに関する110番通報を当事者や近所の人などが行い、警察が駆け付けたところ、その場に子どもがいたというケースが多いです。子どもへの直接的な暴力がなくても、子どもの面前での暴力などは心理的虐待にあたりますので、警察は児相に通告をします。近年の虐待通告件数の増加は、警察からの通告が増えたことが背景にあります。

 

小野寺 虐待事案そのものが増えたというより、通告件数が増えたということですか?SOSが出せる社会になってきたと捉えて良いのでしょうか。

 

山岸 110番という形でしか解消できない状況にある人が増えたという側面もあるかもしれませんが、児童虐待やDVという問題が周知されたことで、SOSが出しやすくなったのは確かでしょう。ただ、児童虐待が周知されたことで、児童相談所=虐待に対応する所というイメージもついてしまい、日常の子育てに関する困りごとなどの相談は減っています。

 

小野寺 確かに、本来は児童虐待のもっと前の段階に対しての相談対応もすべき機関ですよね。

 

山岸 昔は「子どもが保育園に行きたがらないんです」など、日常の育児に関する相談も来ていたんですが、今私たちに求められる役割は重篤な状況にある子どもたちへの対応に変わってきていて……。以前には扱っていた日常の子育てに関しての悩みに対応しきれない※2ことが私たちの課題であり、地域との連携が必要不可欠だと感じています。

 

※2 身近な地域における児童や家庭への支援を充実させるため、「市町村こども家庭総合支援拠点」の開設などが全国的に進められている。

 

小野寺 児相のもっと手前で、地域などにおける子育て支援機能が必要だということですよね。今、地域としては家庭教育や社会教育に改めて力を入れなければいけないと思うんです。家庭教育が疎かになっていて、本来は家庭内で教えるべきことを、教えられていない現状が……。

 

山岸 実際、児童虐待の多くは、家庭内での様々な問題、ひずみが、家庭の中で弱い立場にある子どもに押し寄せ、子どもを通して表面化してしまうというものです。地域の中で一つ一つの家庭がいかに上手く生活できるか、幸福感を高められるか……。家庭教育、社会教育は確かに重要だと思います。

 

小野寺 子どもに罪はないですからね。ニュースでこれだけ報道されているのに、減らないことが不思議にも感じます。

 

山岸 私たちが出会う親御さんたちは、正しい報道に触れていなかったり、社会から孤立している人が多いと感じます。スマホユーザーは特に、自分で情報を選択してしまうので、公に発信されている情報をキャッチしておらず、「聞いたことも見たこともない」という人もいます。

 

小野寺 自分の見ている情報が世の中の全てだと思ってしまうわけですね。虐待や子どもの事故の情報には触れていない、と。

 

山岸 ニュースの一遍は見ていたとしても、その背景まで見ていなかったり、逆に歪んだ情報に反応してしまったり。あとは、本当に深刻な虐待を今現在してしまっているという人は、そういう情報は回避します。自分に向き合いたくないから子どもに虐待をしてしまうので、ニュースに向き合う=自分に向き合うということですから。

 

小野寺 どこかで罪悪感を感じてはいるわけですね。

 

山岸 ただ、体罰は双方の感覚がマヒしていきます。例えば、子どもの怯えた目を見て「なんだその目は!」とエスカレートしていく。家族関係の中で「お父さん叩いちゃったけど、お父さんも手が痛かったと思うよ、お互いにごめんなさいだね」なんて、間を取り持ってくれる存在がいれば良いのですが、難しいですよね。

 

小野寺 今、地域でも「おせっかいを焼こう」が合言葉のようになってますが、合言葉で終わっていて、日常にはまだ反映されていないんですよね。

 

山岸 高齢者が子どもの通学時間に庭先で草むしりなどをするようにして、挨拶するような関係になれば「このおじいちゃんになら言えるかな」というようになるかもしれないです。地域のコミュニティがもう少し豊かだった時代には、夫婦喧嘩を見た地域のおばちゃんが「あんたたち、子どもの前で何やってんの」なんて言ってくれたりしていた部分があるはずなんです。

 

小野寺 民生児童委員や自治会長も各家庭に入ることを躊躇する時代ですからね。

 

山岸 「要対協」※3というネットワークがあり、民生児童委員含め、要保護児童を取りこぼさないように情報共有する仕組みができています。そこがより機能し、ネットワークが広がっていくことが今後は必要です。また、児童虐待が児相や役所でしか解決できないなんて思って欲しくなくて。地域の中で話題にするだけで「みんな見てるんだぞ」というメッセージになり、抑止力になると思うんです。

 

※3「要保護児童対策地域協議会」の略称。虐待を受けている子どもを始めとする要保護児童の早期発見や適切な保護を図るため、関係機関がその子ども等に関する情報や考え方を共有し、適切な連携の下で対応していくための機能。当市では子育て支援課が調整機関。

 

小野寺 縦割りではなく、「みんなで集まって議論する」場を作り、機能させていくことが必要不可欠ですね。  

 

(2回シリーズの前編 ★後編はこちら)

 

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