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(idea2021年7月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

くらし調査 ファイル№13「嫁取り」

 前号で当市域における江戸時代後半~昭和初期の民家の間取りをご紹介しましたが、その調査過程で頻繁に耳にしたのが「『嫁取り』の時は○○から人が出入りする」という話。冠婚葬祭、特に「嫁取り」の時には、何か「特別な家の使い方」をするのかもしれない……。間取り調査から浮上した新たな疑問・好奇心から、当市域における「嫁取りの際の家事情」を調査しました(間取り調査の続編として、儀式そのものよりも「家の使い方」にスポットを当てています)!

※記載内容はあくまでもセンター独自調査の結果です。

「嫁取り」と「しつけ道場」

  自宅での婚礼儀式は、①嫁方の家に婿方一行が赴いて行う儀式と祝宴 ②花嫁御一行が行列を組んで婿方へと向かう花嫁行列と輿入れ ③婿方の家で行われる三三九度など盃事(祝言)の3要素に分けられます。この全てを「嫁取り」と表現する場合もありますが、当市域では概ね③を「嫁取り」と呼ぶようです。

 

 この「嫁取り」における「家の使い方」を調査する中で見えてきたのが「小笠原流」そして「しつけ道場」という2つのキーワード。伊達藩が慶弔・年中行事を「小笠原流」を基本として進めたため、当地方でも「小笠原流」の礼作法が定着したのだとか。江戸末期には一般庶民にも定着し、明治~昭和中期頃まで「小笠原流」の婚礼儀式が行われていましたが、その伝承の場となっていたのが「しつけ(躾)道場」です。

 

 旧正月期に各地(集落もしくは村単位)で行われた同道場は、地域内の家を借り、1~2週間かけて行われ、成人前の若者が参加。婚礼を滞りなく行うための講義と練習のほか、女性は料理・裁縫、男性は算盤など、各種教養を身につけたようです(講師は地域内の先達者等)。

 

 なお、「小笠原流」として伝承されている内容も、実際には簡略化や地域毎のアレンジがされてあり、「小笠原流」とは言い切れないというのが実情です。

 

 

 

 

嫁取り」におけるの使い方

 前頁でも触れましたが、ここで取り上げる「嫁取り」は花嫁行列を経て、「輿入れ」が済んだ状態での「婿方」での「祝言」です。地域や年代によって異なるものもありますが、市内各地でヒアリングした情報をもとに、「折衷案」としてまとめてみました。なお、古くは嫁方の両親は婿方の家での儀式には参列せず、後日両家での盃事を行ったようですが、簡略化等で嫁方の両親も参列するようになったため、今回は双方の両親が参列した場合の座割りにてご紹介します。

 

 

♥point1

お嫁さんは「縁側」から「おかみ」へ

(諸説あり)

お嫁さんは縁側からおかみへ

 

 

 

「お嫁さんは玄関からではなく勝手口から入る」という話が多く聞かれる中、「近親の人に抱えられて縁側に降り、まずは‘おかみ’に行く」という説も同様に聞かれます。その理由が、「まずはご先祖様(=仏壇)にご挨拶をし、婚礼の儀式を終え、正式に‘家の人’になったならば、改めて勝手口から家に入り、‘ご飯を作る人’になったというパフォーマンスをする」というもの。「おかみ」では、ご先祖様への挨拶のあとは「よめごつくり」と呼ばれる美容師さんのような方に、花嫁行列で乱れた身なりを整えてもらい、儀式を待ちます。

 

 


 

♡point2

儀式は「座敷」を開放し、「なかま」では受付と御膳の準備!

「ダイドコ」では「めいばんし」が

お手伝いさんたちに料理の指示だし

 

 

 

「嫁取り」 座敷(でい)等の間取り

 「上(奥)座敷」と「下座敷」の2部屋を持つ家では、襖を開け払い、続き間にして婚礼の儀式を行います。下座敷に続く「なかま」は、最初は受付などを行いますが、参列者が全て座敷に入った後は、参列者それぞれの前にお出しする御膳の準備会場に大変身!その時が来たならば、一斉にお持ちできるよう、配膳作業が行われます。料理そのものは、集落内の「めいばんし」等と呼ばれる料理人が指示役となり、近隣の女性たちによって作られます。

 

♡point3

 

「御取り持ち役」が指示する「御座割」

「嫁取り」 昭和期の「祝言」における座割り

            ▲古式では「盃事」は当事者のみ(花嫁・花婿・媒酌人等)で行いましたが、 

             次第に崩れ、参列者のいる前で行われるようになっていったようです。                 


 当市域の婚礼儀式で最も重要な役となるのが「御取り持ち役(「おどりもち」などと呼ばれる)」。進行役のような存在ですが、「御座割」と呼ばれる席順の指示も同役が行います。近年は新郎新婦が正面に座りますが、当時は「内位」「客位」に分かれ、対面するように座りました。

 

 また、上座には「御諸親様(おもらいさま)」として、客位にあたる方の諸親(もろおや=両親)が着座。つまり、嫁方の家での儀式では婿方の諸親が、婿方の家での儀式では嫁方の諸親が「御諸親様」になります。

 

 その両脇には「脇諸親様(わきもらいさま)」と呼ばれる御諸親様に代わって話す父母の兄弟等が着座。

 

 客位の先頭には「肴はさみ」と呼ばれる「御土産」の肴等を運ぶ役が座り、その次には「媒酌人=仲人」が座ります。当時、仲人は夫婦が勤め、夫が婿方に、妻が嫁方につき、それぞれの世話をしたようです。なお「肴はさみ」は謡曲が謡える人が勤めた、という話も聞かれました。

 

 その隣に花婿・花嫁が対座し、それぞれの隣には「待女房(待女郎)役」「嫁添」が着座。「待女房役」は花婿の姉や叔母など、婿方の家の勝手を知る人物が勤め、全国的には「待女房役」が指示役となって花嫁をエスコートするようですが、当市域ではあまり大きな存在感はなさそうです。

 下座敷側には、「御取り持ち役」や本家、「手前諸親様(てまえもらいさま)=御諸親様ではない方の諸親」が座り、その後ろには親類、近隣住民などが参列します。

 

 

♡point4

床の間には「床飾り」

「しつけ道場」で練習するという「床飾り」。写真は大東町興田の小山鉄夫さんが昭和初期に同道場で習った床飾りを再現したもの。

しつけ道場で練習するという「床飾り」

■□誌面未掲載情報□■

誌面では割愛させていただいた、今回の調査に係る情報です。

なお、市内各地で様々な方にヒアリング協力もいただきました!

この場を借りてありがとうございました。

 

<書籍・論文> ※順不同

畠山宗太郎(2004)『所家風喜多流の里 岩手県南方言「ふんさ゜ぁべん」属編図書』

田河津公民館(1994)『所風の略式をもって取り行いぁんす-田河津弁を使って-』

猿沢地区老人クラブ連合会(1997)『おれたちの若いころ-思い出 あの時代を今に-』

千厩農業改良普及所・室根村・室根村公民館(1977)『むらのならわし 生活行事』

一関文化会議所創立20周年記念事業委員会(編)(2010)『史料が語る郷土』NPO法人一関文化会議所

一関市史編纂委員会(編)(1977)『一関市史-第3巻 各説Ⅱ-』一関市

小平久馬(1929)『日本婚礼式:附・一般礼式、性の教育、九星の相性』

熊谷正雄(1931)『国民礼法』小笠原流国民礼法刊行会

玉置一成(編)(1916)『故実と新式日本婚礼式 下巻』

永島藤三郎(1918)『結婚式概要』

高橋秀子・東海林明宏(2015) 「岩手県一関市奥玉地区で行われていたしつけ道場の講義本の特徴」日本家政学会『日本家政学会誌VoL66 №10』512~520ページ

斎藤美奈子(2006)『冠婚葬祭のひみつ』

互助会保証株式会社・全日本冠婚葬祭互助協会(編)(2014)『冠婚葬祭の歴史-人生儀礼はどう営まれてきたか-』

小笠原敬承斎(1999)『図解美しいふるまい-小笠原流礼法入門-』

小泉和子(編)(2014)『昭和の結婚』

 

<協力>

厳美市民センター:「むかさり行列」に関する映像資料提供

一関民俗資料博物館

小山鉄夫さん(大東町興田)

 

その他たくさんのみなさま

 

 

調査にご協力いただいたみなさま、ありがとうございました! 

↓実際の誌面ではこのように掲載されております

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